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イタリアンナイト [男と女ストーリー]
今にも消えそうなぼんやりした月の夜。男とふたりでイタリアンレストランにいる。
さっき知り合ったばかりの男だ。橋の上で声をかけられた。
誰にでもついて行く軽い女と思わないで欲しい。声をかけられたのは久しぶりだし、割と好みのタイプだったし、何より、帰りたくなかったからだ。
「…ずわい蟹のクリームパスタとシーザーサラダ、あとワインをボトルで。あ、君も飲むよね」と男が聞いたので私は頷いた。
「じゃあ、グラスふたつね」
女性店員は、「はあ」と生返事をして、落ち着かない様子で私たちを交互に見た。
「感じ悪いな。あの店員」
店員が下がると、男が小さな声で囁いた。
「早く帰りたいんでしょ。私たちが最後の客だから」
店員は、ワインや食事を持ってくるたび怪訝な顔で私たちを見た。男はいちいち気にしたけれど、私はどうでもよかったから、運ばれたワインを一気に飲んでみた。
「すごいね。酒強いんだね」
「ええ。前はあまり飲めなかったけど、飲めるようになったわ」
「いいね。酒飲みの女って好きなんだ」
私がパスタとサラダを食べてる時に、男が自己紹介のようなことをしていたけれど、正直そんなものはどうでもいい。
「ねえ、ピザとラザニアも頼んでくれる?あとクリームブリュレとティラミスとシナモンティ」
「え?そんなに食べて大丈夫?」
「ええ。いくらでも食べられるわ」
「へえ、大酒飲みで大食いな美人か。ますますいいね」
店員はふたり。私たちを見てヒソヒソ話をしている。どうでもいい。
パスタもピザもラザニアも、美味しいはずのデザートも私の胃袋を満足させることはなかった。
最後のワインを飲み干すころ、男が待っていたように切り出した。
「これからどうする?」
ほらきた、と私は男をじっと見た。
「俺のマンションに来ないか?」
その言葉を私は待っていた。
「いいわよ。だけど私、居心地が良かったら住みついちゃうかもよ」
「いいよ。好きなだけ居ていいよ。君とは気が合いそうだ」
「じゃあ、決まりね」
私たちは席を立った。
男が会計を済ませるあいだ、外で待った。月はすっかり隠れてしまって星もない。何だかミステリアスな夜だ。カランと音を立てて男が出てきた。
「やっぱり、ここの店員変だよ」
「どうして?」
「真面目な顔でさ、どういうトリックですかって聞くんだよ」
「トリック?」
「そう。君が平気な顔であんまり食べるから、不思議に思ったんじゃない?全く意味不明。変な店だよ」
男は笑いながら私の腰に手を回した。
「冷えてるね。寒いかい?」
「平気よ。ちょっと体温が低いだけ」
「へえ、大酒飲みで大食いで低体温か。よくわからないけど、なんかいいね」
男は、タクシーを拾おうと大通りに向かった。この時間だと、車は殆ど走っていない。静かな夜だ。
男が、不意に外灯の下で振り向いた。
「どうかした?」
「いや…、君の…靴音が聞こえないんだけど」
男は私の足元を見た。顔色がみるみる変わる。
「君の…影が…ない」
ああ、ばれてしまった。「えへ」と笑ってみたけれど、男の表情は硬いまま青ざめている。
「君は、もしかして」
「ばれちゃったなら仕方ないわ。そうよ、私は幽霊よ。たぶん、あなたにしか見えてないわ。この世に未練がたくさんあるから帰ってきちゃったの。ねえ、あなたの部屋に住みついていいんでしょう。早く行きましょうよ。私、あの世には帰りたくないの」
甘えた声を出してみたけどダメだった。男は真っ暗な歩道を全速力で走り去った。マヌケな叫び声まであげて。
ああ…、もう少しだったのに。仕方ない。次を探しましょう。

****
これは、公募ガイドの「小説虎の穴」に応募してボツだったものです。
テーマは「実は私は」…自分の正体を明かす小説です。
優秀作品は、確かに面白かったです。私はまだまだですね^^
次回がんばりまっす!

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さっき知り合ったばかりの男だ。橋の上で声をかけられた。
誰にでもついて行く軽い女と思わないで欲しい。声をかけられたのは久しぶりだし、割と好みのタイプだったし、何より、帰りたくなかったからだ。
「…ずわい蟹のクリームパスタとシーザーサラダ、あとワインをボトルで。あ、君も飲むよね」と男が聞いたので私は頷いた。
「じゃあ、グラスふたつね」
女性店員は、「はあ」と生返事をして、落ち着かない様子で私たちを交互に見た。
「感じ悪いな。あの店員」
店員が下がると、男が小さな声で囁いた。
「早く帰りたいんでしょ。私たちが最後の客だから」
店員は、ワインや食事を持ってくるたび怪訝な顔で私たちを見た。男はいちいち気にしたけれど、私はどうでもよかったから、運ばれたワインを一気に飲んでみた。
「すごいね。酒強いんだね」
「ええ。前はあまり飲めなかったけど、飲めるようになったわ」
「いいね。酒飲みの女って好きなんだ」
私がパスタとサラダを食べてる時に、男が自己紹介のようなことをしていたけれど、正直そんなものはどうでもいい。
「ねえ、ピザとラザニアも頼んでくれる?あとクリームブリュレとティラミスとシナモンティ」
「え?そんなに食べて大丈夫?」
「ええ。いくらでも食べられるわ」
「へえ、大酒飲みで大食いな美人か。ますますいいね」
店員はふたり。私たちを見てヒソヒソ話をしている。どうでもいい。
パスタもピザもラザニアも、美味しいはずのデザートも私の胃袋を満足させることはなかった。
最後のワインを飲み干すころ、男が待っていたように切り出した。
「これからどうする?」
ほらきた、と私は男をじっと見た。
「俺のマンションに来ないか?」
その言葉を私は待っていた。
「いいわよ。だけど私、居心地が良かったら住みついちゃうかもよ」
「いいよ。好きなだけ居ていいよ。君とは気が合いそうだ」
「じゃあ、決まりね」
私たちは席を立った。
男が会計を済ませるあいだ、外で待った。月はすっかり隠れてしまって星もない。何だかミステリアスな夜だ。カランと音を立てて男が出てきた。
「やっぱり、ここの店員変だよ」
「どうして?」
「真面目な顔でさ、どういうトリックですかって聞くんだよ」
「トリック?」
「そう。君が平気な顔であんまり食べるから、不思議に思ったんじゃない?全く意味不明。変な店だよ」
男は笑いながら私の腰に手を回した。
「冷えてるね。寒いかい?」
「平気よ。ちょっと体温が低いだけ」
「へえ、大酒飲みで大食いで低体温か。よくわからないけど、なんかいいね」
男は、タクシーを拾おうと大通りに向かった。この時間だと、車は殆ど走っていない。静かな夜だ。
男が、不意に外灯の下で振り向いた。
「どうかした?」
「いや…、君の…靴音が聞こえないんだけど」
男は私の足元を見た。顔色がみるみる変わる。
「君の…影が…ない」
ああ、ばれてしまった。「えへ」と笑ってみたけれど、男の表情は硬いまま青ざめている。
「君は、もしかして」
「ばれちゃったなら仕方ないわ。そうよ、私は幽霊よ。たぶん、あなたにしか見えてないわ。この世に未練がたくさんあるから帰ってきちゃったの。ねえ、あなたの部屋に住みついていいんでしょう。早く行きましょうよ。私、あの世には帰りたくないの」
甘えた声を出してみたけどダメだった。男は真っ暗な歩道を全速力で走り去った。マヌケな叫び声まであげて。
ああ…、もう少しだったのに。仕方ない。次を探しましょう。

****
これは、公募ガイドの「小説虎の穴」に応募してボツだったものです。
テーマは「実は私は」…自分の正体を明かす小説です。
優秀作品は、確かに面白かったです。私はまだまだですね^^
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写真集 [コメディー]
「もしもし、お母さん。あたし、朋美。
新しい写真集が出来たから送るね。
もっとも、あたしの写真は4枚しか載ってないけどね。
赤い水着の写真がいちばん気に入ってるんだ。
アングルがいいの。すごいセクシーだから見たら感想教えてね。
お父さんには見せないでね。
まだあたしの仕事、認めてくれてないでしょう?
だけどお父さんの言うとおり、甘い世界じゃないわ。
正直、ちょっときついなって思うときもある。
でももう少し頑張ってみるわ。
そのうち、あたしひとりだけの写真集も、きっと出して見せる。
そうしたら、お父さんも認めてくれるかな?
それとも、やっぱりやめろって言うかしら。
じゃあね、体に気を付けてね」
◇
「これが朋美の写真集ね。あらまあ、なんて小さな水着。ヌードも撮ったりするのかしら。
これじゃあお父さんに見せられないわね」
「なんだって?何を見せられないって?」
「あ…あら、あなた帰ってたの?」
「何を隠した。見せてみろ」
「ああ…仕方ないわね。朋美の写真よ」
「な…なんだ、これは!朋美の連絡先を教えろ!」
「お父さん、あの子も一生懸命なのよ。怒らないでね」
「いいから教えろ!」
「はいはい」
◇
「もしもし朋美か。何だ、あの写真は!
ああ、見たさ。お父さん、驚いたぞ。
おまえは風景写真を撮っているとばかり思っていたのに、グラビア撮ってるならそう言え。
グラビア写真を撮るならお父さんは何も言わない。
アイドルの写真も撮るのか?
今度は写真集じゃなくて、生写真も送りなさい。
お母さんに内緒でな。
立派なカメラマンになれよ!」

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新しい写真集が出来たから送るね。
もっとも、あたしの写真は4枚しか載ってないけどね。
赤い水着の写真がいちばん気に入ってるんだ。
アングルがいいの。すごいセクシーだから見たら感想教えてね。
お父さんには見せないでね。
まだあたしの仕事、認めてくれてないでしょう?
だけどお父さんの言うとおり、甘い世界じゃないわ。
正直、ちょっときついなって思うときもある。
でももう少し頑張ってみるわ。
そのうち、あたしひとりだけの写真集も、きっと出して見せる。
そうしたら、お父さんも認めてくれるかな?
それとも、やっぱりやめろって言うかしら。
じゃあね、体に気を付けてね」
◇
「これが朋美の写真集ね。あらまあ、なんて小さな水着。ヌードも撮ったりするのかしら。
これじゃあお父さんに見せられないわね」
「なんだって?何を見せられないって?」
「あ…あら、あなた帰ってたの?」
「何を隠した。見せてみろ」
「ああ…仕方ないわね。朋美の写真よ」
「な…なんだ、これは!朋美の連絡先を教えろ!」
「お父さん、あの子も一生懸命なのよ。怒らないでね」
「いいから教えろ!」
「はいはい」
◇
「もしもし朋美か。何だ、あの写真は!
ああ、見たさ。お父さん、驚いたぞ。
おまえは風景写真を撮っているとばかり思っていたのに、グラビア撮ってるならそう言え。
グラビア写真を撮るならお父さんは何も言わない。
アイドルの写真も撮るのか?
今度は写真集じゃなくて、生写真も送りなさい。
お母さんに内緒でな。
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スカイツリーからあなたへ [ファンタジー]
スカイツリーさん、こんにちは。
もうすぐオープンなのね。楽しみでしょうね。
ああ…わたしも、あなたの展望台から富士山や東京湾を眺めてみたいわ。
わたしが住んでいた家も、きっと見えるわね。
だけど不思議だわ。
毎日毎日見上げていたあなたを、上から見下ろしているなんて。
わたし、空の上にいるのよ。そう、天国。
天国では、父と母が待っていてくれたわ。だけどずるいのよ。
ふたりとも、わたしよりも若いの。
それだけわたしが長生きした…ということね。
結婚は一度したけど失敗したの。
子供はいないわ。だけど全然寂しくなかった。
わたしは教師をしていたから、教え子が子供みたいなものよ。
大人になっても、たくさんの子が訪ねてきてくれた。
だから寂しくなかったのよ。
それにしても残念。
あと3か月、長生きできたらよかったのに。
一番乗りであなたの中に入りたかったな。
だってね、あなたが小さいころからずっと、写真を撮っていたのよ。
だんだん高くなって立派になって。
まるで孫の成長を見ているようだったわ。
おかしいかしら?でも本当よ。
ちょっとだけ、そっちに行ってもいい?
ええ、もちろん誰にも見つからないようにするわ。
わあ、やっぱり素敵。このガラス張りの床から下を見たかったの。
わたし、高いところが大好きなのよ。
いい眺めね。わたし、こんな街に住んでいたのね。
あら?ねえ見て。あそこに集まっているのは、わたしの教え子たちよ。
何をしているのかしら。ちょっと見てくるわ。
ねえ聞いて。あの子たち、わたしが撮ったスカイツリーの写真を飾って、写真展を開いてくれたのよ。
病院に来てくれたときに、カメラを渡したの。続きを撮ってほしかったからよ。
ああ、なんていい子たちでしょう。夢みたいだわ。
ねえ、スカイツリーさん。最後にお願いがあるの。
写真を撮らせて。
ええ、カメラはないわ。心のシャッターで、想い描いた絵を撮るの。
それじゃあ、撮るわよ。
『カシャ』
そろそろ行くわね。スカイツリーさん、本当にありがとう。
****
スカイツリー近くの小さなギャラリー。
先生の追悼記念に開かれた写真展。
写真が1枚増えていることに、最初に気づくのは誰だろう。
スカイツリーの展望台から、笑顔で街を見守る先生の写真。
教え子たちへ最後のプレゼントだ。
それは、もしかしたらスカイツリーからの贈り物かもしれない。


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もうすぐオープンなのね。楽しみでしょうね。
ああ…わたしも、あなたの展望台から富士山や東京湾を眺めてみたいわ。
わたしが住んでいた家も、きっと見えるわね。
だけど不思議だわ。
毎日毎日見上げていたあなたを、上から見下ろしているなんて。
わたし、空の上にいるのよ。そう、天国。
天国では、父と母が待っていてくれたわ。だけどずるいのよ。
ふたりとも、わたしよりも若いの。
それだけわたしが長生きした…ということね。
結婚は一度したけど失敗したの。
子供はいないわ。だけど全然寂しくなかった。
わたしは教師をしていたから、教え子が子供みたいなものよ。
大人になっても、たくさんの子が訪ねてきてくれた。
だから寂しくなかったのよ。
それにしても残念。
あと3か月、長生きできたらよかったのに。
一番乗りであなたの中に入りたかったな。
だってね、あなたが小さいころからずっと、写真を撮っていたのよ。
だんだん高くなって立派になって。
まるで孫の成長を見ているようだったわ。
おかしいかしら?でも本当よ。
ちょっとだけ、そっちに行ってもいい?
ええ、もちろん誰にも見つからないようにするわ。
わあ、やっぱり素敵。このガラス張りの床から下を見たかったの。
わたし、高いところが大好きなのよ。
いい眺めね。わたし、こんな街に住んでいたのね。
あら?ねえ見て。あそこに集まっているのは、わたしの教え子たちよ。
何をしているのかしら。ちょっと見てくるわ。
ねえ聞いて。あの子たち、わたしが撮ったスカイツリーの写真を飾って、写真展を開いてくれたのよ。
病院に来てくれたときに、カメラを渡したの。続きを撮ってほしかったからよ。
ああ、なんていい子たちでしょう。夢みたいだわ。
ねえ、スカイツリーさん。最後にお願いがあるの。
写真を撮らせて。
ええ、カメラはないわ。心のシャッターで、想い描いた絵を撮るの。
それじゃあ、撮るわよ。
『カシャ』
そろそろ行くわね。スカイツリーさん、本当にありがとう。
****
スカイツリー近くの小さなギャラリー。
先生の追悼記念に開かれた写真展。
写真が1枚増えていることに、最初に気づくのは誰だろう。
スカイツリーの展望台から、笑顔で街を見守る先生の写真。
教え子たちへ最後のプレゼントだ。
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七匹のこやぎ殺人事件 [名作パロディー]

なるほど。
お兄さんやお姉さんが次々に殺害された中、あなただけが助かったというわけですね。
ほう…柱時計に隠れた。
しかし妙ですな。こんな狭い時計に、どうやって入ったのですか?
ああ、体がずいぶんと柔らかい。そういうことですか。
新体操をやっていた。そうですか。わかりました。
しかし、時計の中に隠れると、時計の針は止まりますよね。
犯人はそれに気づかなかったのでしょうか。
頭の悪そうな男だった?なるほど。
犯人は男だと言いましたが、知ってる男ですか?
そうですか。面識のない男が突然入ってきたわけですか。
しかし腑に落ちませんなあ。
お母さんが留守の時をねらって、犯人は入ってきたんでしょう?
玄関に鍵はかけていなかったんですか?
なに?犯人がお母さんの声を真似した?
それで開けてしまったんですか。防犯意識が低いですね。そんな手に引っかかるなんて。
ほう、手を見た。お母さんのように白い手だったと…。
ふうむ…。なぜ手を見る前に顔を見ないのですか?
大きなマスクと帽子で顔はわからなかった?ひどい花粉症ですか。ふうん…。
それで、モニターで手を確認したわけですか。
しかし犯人は、なぜあなたを探さなかったのでしょう。
私が犯人だったら、家中隈なく探しますよ。だって顔を見られたんでしょう?
え?時間を気にしていた?
柱時計が3時を告げた時に慌てて出て行ったって?
ほら、ボロが出た。
なぜあなたが隠れていたはずの時計が鳴るのですか?
…犯人は、あなたですね。
***
なかなか面白い殺人事件でしたね。
いや、殺人事件ではありません。だって、6人の兄と姉は生きていますから。
ご説明しましょう。
小八木家の末っ子メイコは、母親の愛情に飢えていたんです。
大学受験を控えた双子の兄、高校受験を控えた三つ子の姉、やんちゃで母を困らせる兄。
母親は、兄や姉の心配ばかり。末っ子のメイコは母親の愛情を独り占めしようとしたんです。
母親が出かけたあとに、兄と姉に麻酔銃を撃ったんですよ。
兄姉たちをベッドに眠らせて、たっぷり甘えようとしたんです。
しかし思った以上に早く帰った母親が驚いて、警察に通報してしまったというわけです。
お母さん、そんなわけですから、どうか叱らないで下さい。
じきにみんなも目を覚ますでしょう。
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強盗ちゃん [コメディー]
「やい、金を出せ」
きゃ~!うわさの子供銀行強盗だわ。
ついにうちの銀行にも来たのね。
「早く金を出せ。撃つぞ」
かわいい~。思ったより小っちゃいわ。
顔の半分を隠したサングラス。袖が長い黒のジャケット。スニーカーはスヌーピーよ。
ピストルは、水鉄砲かしら。
うわさ通り、すごく可愛いわ。
ちゃんと強盗ごっこに付き合ってあげなくちゃ。
ちょっと震えて見せたりしてね。
「このバッグに金を詰めろ」
出た~!ミッキーのリュック。ストラップはアンパンマンよ。
可愛いなあ。
「お待ちください。すぐにお金を詰めてまいります」
「早くしないと撃つぞ」
お金はもちろん、子供銀行のお金。おもちゃのお金よ。
このために用意してあるの。
「主任、おもちゃのお金がありません。年度末の大掃除で捨てちゃったかも」
「なんですって。ずさんな管理ね。仕方ないわ、あなた作って」
「私がですか?」
「そうよ。金額は10億円。福沢諭吉の代わりにパンダちゃんの絵でも書いて」
「わかりました。やってみます」
「今、ご用意していますので、オレンジジュースでもどうぞ」
「果汁100%じゃないと撃つぞ」
かわいい~。
両手でグラスを持ってるわ。
「主任、出来ました」
「ありがとう。さっそく強盗ちゃんに渡して」
「おい、これは子供銀行のお札じゃないぞ。にせ札だ」
「え~、そんなことありませんよ。ほら、ちゃんとパンダの絵も書いてありますよ」
「こんなのパンダじゃない。にせ札だ」

「ちゃんと本物を持ってこないと撃つぞ」
「ぼうや、うちの銀行にはこれしかないのよ。もう帰って」
「仕方ない。撃つぞ」
ば~~~~~ん!
「なんで?うそ?どういうこと?
なぜピストルだけ本物なの?」
ばったり…

これ?本物?

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きゃ~!うわさの子供銀行強盗だわ。
ついにうちの銀行にも来たのね。
「早く金を出せ。撃つぞ」
かわいい~。思ったより小っちゃいわ。
顔の半分を隠したサングラス。袖が長い黒のジャケット。スニーカーはスヌーピーよ。
ピストルは、水鉄砲かしら。
うわさ通り、すごく可愛いわ。
ちゃんと強盗ごっこに付き合ってあげなくちゃ。
ちょっと震えて見せたりしてね。
「このバッグに金を詰めろ」
出た~!ミッキーのリュック。ストラップはアンパンマンよ。
可愛いなあ。
「お待ちください。すぐにお金を詰めてまいります」
「早くしないと撃つぞ」
お金はもちろん、子供銀行のお金。おもちゃのお金よ。
このために用意してあるの。
「主任、おもちゃのお金がありません。年度末の大掃除で捨てちゃったかも」
「なんですって。ずさんな管理ね。仕方ないわ、あなた作って」
「私がですか?」
「そうよ。金額は10億円。福沢諭吉の代わりにパンダちゃんの絵でも書いて」
「わかりました。やってみます」
「今、ご用意していますので、オレンジジュースでもどうぞ」
「果汁100%じゃないと撃つぞ」
かわいい~。
両手でグラスを持ってるわ。
「主任、出来ました」
「ありがとう。さっそく強盗ちゃんに渡して」
「おい、これは子供銀行のお札じゃないぞ。にせ札だ」
「え~、そんなことありませんよ。ほら、ちゃんとパンダの絵も書いてありますよ」
「こんなのパンダじゃない。にせ札だ」

「ちゃんと本物を持ってこないと撃つぞ」
「ぼうや、うちの銀行にはこれしかないのよ。もう帰って」
「仕方ない。撃つぞ」
ば~~~~~ん!
「なんで?うそ?どういうこと?
なぜピストルだけ本物なの?」
ばったり…
これ?本物?

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恋のぼり [ファンタジー]
5月の風はなんて爽やか。
気持ちがいいわ。心が洗われるわね。
だけどね、私は悪いオンナなの。恋多きオンナなの。
家族がいるのに、5軒先の佐々木さんのところのご主人が気になるの。
大きくてたくましい彼。
風の中で悠々と生きる姿が素敵だわ。
彼も私を気にしているのがわかるの。
向こうにも家族がいるから、ダブル不倫になっちゃう。
私のところは3人家族だけど、あちらは子供がたくさんいるの。
佐々木さんの家はお金持ちだから。
ああ、光を集めたサツキの赤が、私を挑発するわ。
甍の波が冒険しろと私を誘うわ。
風よ、私をつなぎとめる鎖を外して。
彼とふたりで、大空へ逃げるわ。
そしてどこまでも、愛の海を泳ぎ続けるのよ。
*
「あなた、うちの緋鯉が風に飛ばされちゃったわ」
「佐々木さんのところの真鯉も、無くなったらしいぞ」
「いやねえ。どこに行っちゃったのかしら」
*
5月の風は爽やか。
私たち、5月が過ぎても暗い箱に仕舞われることはないわ。
ふたりで、どこまでも泳ぎ続けましょう。
*
「あなた、佐々木さんが鯉のぼりを1匹分けてくださったわ。2匹じゃさみしいだろうって」
「それはよかった」
*
5月の風は爽やかだ。
きのう、妻が5軒先の佐々木さんのご主人と駆け落ちした。
ショックだったけど、今日新しい妻が来た。
佐々木さんのところの娘さんだ。
なんだか、ちょっとウキウキだ。
天にも昇る…いや、天には昇らないが、屋根より高いところで愛を育もう。


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気持ちがいいわ。心が洗われるわね。
だけどね、私は悪いオンナなの。恋多きオンナなの。
家族がいるのに、5軒先の佐々木さんのところのご主人が気になるの。
大きくてたくましい彼。
風の中で悠々と生きる姿が素敵だわ。
彼も私を気にしているのがわかるの。
向こうにも家族がいるから、ダブル不倫になっちゃう。
私のところは3人家族だけど、あちらは子供がたくさんいるの。
佐々木さんの家はお金持ちだから。
ああ、光を集めたサツキの赤が、私を挑発するわ。
甍の波が冒険しろと私を誘うわ。
風よ、私をつなぎとめる鎖を外して。
彼とふたりで、大空へ逃げるわ。
そしてどこまでも、愛の海を泳ぎ続けるのよ。
*
「あなた、うちの緋鯉が風に飛ばされちゃったわ」
「佐々木さんのところの真鯉も、無くなったらしいぞ」
「いやねえ。どこに行っちゃったのかしら」
*
5月の風は爽やか。
私たち、5月が過ぎても暗い箱に仕舞われることはないわ。
ふたりで、どこまでも泳ぎ続けましょう。
*
「あなた、佐々木さんが鯉のぼりを1匹分けてくださったわ。2匹じゃさみしいだろうって」
「それはよかった」
*
5月の風は爽やかだ。
きのう、妻が5軒先の佐々木さんのご主人と駆け落ちした。
ショックだったけど、今日新しい妻が来た。
佐々木さんのところの娘さんだ。
なんだか、ちょっとウキウキだ。
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美しすぎる兄嫁 [男と女ストーリー]
よく晴れた5月の連休だ。
兄ちゃんが連れてきたお嫁さんは、まるでバービー人形のようだ。
きれいな金色の長い髪、マッチ棒が3本くらい乗りそうな長いまつ毛、つやつやの唇。
白いブラウスに、信じられないほどに短いスカート。
すらりと伸びた足に、10センチもある真っ赤なハイヒール。
モデルのような体形で、田んぼのあぜ道を優雅に歩いた。
僕は、母ちゃんから頼まれた醤油と味噌を買いに行った帰りに、兄ちゃんと会った。
並んで歩くのが恥ずかしいほど、ふたりはお似合いだ。
兄ちゃんはかっこよくて頭がいい。だからこんな素敵な人と付き合えたんだ。
田んぼのじっちゃんやばっちゃんも、手を止めてバービーに見とれた。
バービーは無口だ。
兄ちゃんが僕を「弟だよ」と紹介した時も、軽く頷いただけだった。
僕は思い切って話しかけてみた。
「ハ、ハロー」
兄ちゃんが笑いながら振り返り、「馬鹿だな。サナエは日本語しかわからないよ」と言った。
なんだ、日本人か。しかもサナエなんて古風な名前だったのか。
僕は少し安心した。金色に髪を染めた人なんて、そういえば珍しくない。
サナエさんは、振り向いて少しだけ笑った
父ちゃんと母ちゃんは、ニコニコしてサナエさんを迎えた。
「あんれ~、めんこいな~」
「疲れたべ。さあ、入って休め」
サナエさんは、やはりしゃべらず軽く会釈しただけだった。
夜、父ちゃんと兄ちゃんが酒を飲んで笑っている中、サナエさんはひとり縁側に座っていた。
母ちゃんが着せた浴衣がよく似合っている。
髪をアップにしたサナエさんのうなじが白くて、まるで百合の花のようだ。
「何見てるんですか?」と僕は話しかけた。
返事はない。もしかしたら、言葉が不自由なのかもしれない。
サナエさんが見ている先には、美しい夜景も何もない。
ただ、広い田んぼがどこまでも続いているだけだ。
「田んぼ見てるの?田舎で驚いたよね」
返事はない。僕は、それでもよかった。
こんなきれいな人と、同じ景色が見られるのなら言葉はいらない。
翌日は、田植えだ。
兄ちゃんは、田植えの手伝いで帰ってきた。もちろん僕も手伝いをする。
起きると、父ちゃんと兄ちゃんは、もう出かけていた。
「あれ?父ちゃんたち早いなあ」
「あんたも早く朝ごはん食べろ。田んぼさ行ぐど」
「サナエさんは?」
「田んぼに決まってるべ」
なんと、あんなきれいな人にまで田植えを手伝わせるのか。
僕は驚いて、急いで田んぼに向かった。
田んぼには、近所の人たちも集まっていた。
父ちゃんも兄ちゃんも、腕組みをして田んぼを見ている。
あれ?田植えは?
そう思って田んぼを見ると、そこにはすごいスピードで田植えをする、サナエさんの姿があった。
「すげえなあ。てえしたもんだ」
「おらの田んぼにも欲しいなあ。田植えロボット」
田植えロボット?
よく見ると、すごく正確に苗を植えている。その動きは、紛れもなくロボットだ。
「あれえ、うまぐやってるねえ」
母ちゃんがお茶を持ってやってきた。
「よぐ働ぐ嫁さんだこと」
「だから、嫁さんじゃないってば。何度言えばわかるんだよ。彼女は田植えロボ・早苗ちゃんだ」
「ロ・・・ロボット?」
「うん。秋には稲刈りロボ・こがねちゃんを連れてくるよ」
兄ちゃんが笑った。
何で田植えロボットが金髪のバービーなんだよ…その言葉を僕は飲み込んだ。
だって、やっぱりきれいな方がいいじゃないか。


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兄ちゃんが連れてきたお嫁さんは、まるでバービー人形のようだ。
きれいな金色の長い髪、マッチ棒が3本くらい乗りそうな長いまつ毛、つやつやの唇。
白いブラウスに、信じられないほどに短いスカート。
すらりと伸びた足に、10センチもある真っ赤なハイヒール。
モデルのような体形で、田んぼのあぜ道を優雅に歩いた。
僕は、母ちゃんから頼まれた醤油と味噌を買いに行った帰りに、兄ちゃんと会った。
並んで歩くのが恥ずかしいほど、ふたりはお似合いだ。
兄ちゃんはかっこよくて頭がいい。だからこんな素敵な人と付き合えたんだ。
田んぼのじっちゃんやばっちゃんも、手を止めてバービーに見とれた。
バービーは無口だ。
兄ちゃんが僕を「弟だよ」と紹介した時も、軽く頷いただけだった。
僕は思い切って話しかけてみた。
「ハ、ハロー」
兄ちゃんが笑いながら振り返り、「馬鹿だな。サナエは日本語しかわからないよ」と言った。
なんだ、日本人か。しかもサナエなんて古風な名前だったのか。
僕は少し安心した。金色に髪を染めた人なんて、そういえば珍しくない。
サナエさんは、振り向いて少しだけ笑った
父ちゃんと母ちゃんは、ニコニコしてサナエさんを迎えた。
「あんれ~、めんこいな~」
「疲れたべ。さあ、入って休め」
サナエさんは、やはりしゃべらず軽く会釈しただけだった。
夜、父ちゃんと兄ちゃんが酒を飲んで笑っている中、サナエさんはひとり縁側に座っていた。
母ちゃんが着せた浴衣がよく似合っている。
髪をアップにしたサナエさんのうなじが白くて、まるで百合の花のようだ。
「何見てるんですか?」と僕は話しかけた。
返事はない。もしかしたら、言葉が不自由なのかもしれない。
サナエさんが見ている先には、美しい夜景も何もない。
ただ、広い田んぼがどこまでも続いているだけだ。
「田んぼ見てるの?田舎で驚いたよね」
返事はない。僕は、それでもよかった。
こんなきれいな人と、同じ景色が見られるのなら言葉はいらない。
翌日は、田植えだ。
兄ちゃんは、田植えの手伝いで帰ってきた。もちろん僕も手伝いをする。
起きると、父ちゃんと兄ちゃんは、もう出かけていた。
「あれ?父ちゃんたち早いなあ」
「あんたも早く朝ごはん食べろ。田んぼさ行ぐど」
「サナエさんは?」
「田んぼに決まってるべ」
なんと、あんなきれいな人にまで田植えを手伝わせるのか。
僕は驚いて、急いで田んぼに向かった。
田んぼには、近所の人たちも集まっていた。
父ちゃんも兄ちゃんも、腕組みをして田んぼを見ている。
あれ?田植えは?
そう思って田んぼを見ると、そこにはすごいスピードで田植えをする、サナエさんの姿があった。
「すげえなあ。てえしたもんだ」
「おらの田んぼにも欲しいなあ。田植えロボット」
田植えロボット?
よく見ると、すごく正確に苗を植えている。その動きは、紛れもなくロボットだ。
「あれえ、うまぐやってるねえ」
母ちゃんがお茶を持ってやってきた。
「よぐ働ぐ嫁さんだこと」
「だから、嫁さんじゃないってば。何度言えばわかるんだよ。彼女は田植えロボ・早苗ちゃんだ」
「ロ・・・ロボット?」
「うん。秋には稲刈りロボ・こがねちゃんを連れてくるよ」
兄ちゃんが笑った。
何で田植えロボットが金髪のバービーなんだよ…その言葉を僕は飲み込んだ。
だって、やっぱりきれいな方がいいじゃないか。

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カプセル [SF]
カプセルの中で目覚めた。
ずいぶん長く眠っていたようだ。
眠る前の記憶は殆どないが、地球が破滅的な状態であったことは憶えている。
そして私は、カプセルに入れられた。
私は選ばれたのだ。地球が滅亡する前に、選ばれた者だけがカプセルで脱出した。
若くて美しい男女が選ばれた。
どこかの星で、美しい地球人の子孫を残すために。
きっとそうだと、私は思った。
ここはどこだろう?
同じようなカプセルが並んでいる。安全な星にたどり着いたのだろうか。
丸い透明の窓から隣のカプセルの男が見えた。
やはり目覚めたばかりの男は、美しい青い瞳で私を見た。
なんてきれいな人。
カプセルを出たら、私はおそらく彼と恋に落ちるだろう。
早く出たい。カプセルは狭くて手を伸ばすことも出来ない。彼に触れることも出来ない。きっと彼も、同じように私を求めているはずなのに。
その時、世界がぐらりと揺れた。
私のカプセルは大きく回転して他のカプセルと引き離された。
「たすけて」と見上げた先に空はない。ひしめくカプセルの海で、彼が心配そうに私を見ていた。
目の前に真っ暗な穴が開いて、真っ逆さまに私は落ちた。
カプセルに入っていたために衝撃は少なかった。
かすかな光が差し込み、大きくて温かいものが私をふわりと持ち上げた。
それは、巨大な手のようだ。
巨大な手は、簡単にカプセルのふたをこじ開けた。
そしてその手は、私を優しく包んだ。
久しぶりに感じた外の空気。ほのかな光。騒音。ここは、どこなのだろう。
**
「あっ、やった~!地球人のメス、ゲットした」
「うわ~、黒髪の東洋系だね。それ、すごいレアだよ」
「うれしい。欲しかったんだ」
「あたしのは、地球人のオスだった。金髪のオスは持ってるからいらない。アンタにあげる」
「ホント?いいの?あたし、オスメス、つがいで欲しかったんだ」
**
しばらくして、私はガラスケースに入れられた。
巨大な目が私を覗いている。
私が小さくなったのか、この星の住人が巨大なのか、私にはわからない。
だけど、私の隣には彼がいる。
青いきれいな瞳で、私を見ている。
そっと触れると、彼も私の手を握り返した。
ここがどこで、これからどうなるか、そんなことはどうでもよかった。
今はただ、彼の温もりが欲しかった。
**
「わあ、オスとメスが手をつないでいる」
「もしかしたら繁殖するかもよ」
「楽しみだね」

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ずいぶん長く眠っていたようだ。
眠る前の記憶は殆どないが、地球が破滅的な状態であったことは憶えている。
そして私は、カプセルに入れられた。
私は選ばれたのだ。地球が滅亡する前に、選ばれた者だけがカプセルで脱出した。
若くて美しい男女が選ばれた。
どこかの星で、美しい地球人の子孫を残すために。
きっとそうだと、私は思った。
ここはどこだろう?
同じようなカプセルが並んでいる。安全な星にたどり着いたのだろうか。
丸い透明の窓から隣のカプセルの男が見えた。
やはり目覚めたばかりの男は、美しい青い瞳で私を見た。
なんてきれいな人。
カプセルを出たら、私はおそらく彼と恋に落ちるだろう。
早く出たい。カプセルは狭くて手を伸ばすことも出来ない。彼に触れることも出来ない。きっと彼も、同じように私を求めているはずなのに。
その時、世界がぐらりと揺れた。
私のカプセルは大きく回転して他のカプセルと引き離された。
「たすけて」と見上げた先に空はない。ひしめくカプセルの海で、彼が心配そうに私を見ていた。
目の前に真っ暗な穴が開いて、真っ逆さまに私は落ちた。
カプセルに入っていたために衝撃は少なかった。
かすかな光が差し込み、大きくて温かいものが私をふわりと持ち上げた。
それは、巨大な手のようだ。
巨大な手は、簡単にカプセルのふたをこじ開けた。
そしてその手は、私を優しく包んだ。
久しぶりに感じた外の空気。ほのかな光。騒音。ここは、どこなのだろう。
**
「あっ、やった~!地球人のメス、ゲットした」
「うわ~、黒髪の東洋系だね。それ、すごいレアだよ」
「うれしい。欲しかったんだ」
「あたしのは、地球人のオスだった。金髪のオスは持ってるからいらない。アンタにあげる」
「ホント?いいの?あたし、オスメス、つがいで欲しかったんだ」
**
しばらくして、私はガラスケースに入れられた。
巨大な目が私を覗いている。
私が小さくなったのか、この星の住人が巨大なのか、私にはわからない。
だけど、私の隣には彼がいる。
青いきれいな瞳で、私を見ている。
そっと触れると、彼も私の手を握り返した。
ここがどこで、これからどうなるか、そんなことはどうでもよかった。
今はただ、彼の温もりが欲しかった。
**
「わあ、オスとメスが手をつないでいる」
「もしかしたら繁殖するかもよ」
「楽しみだね」

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別れてもダメな人 [男と女ストーリー]
2年間一緒に暮らしたケンちゃんと別れた。
別れて3か月経つのに、ケンちゃんはいまだに私に電話をしてくる。
「あのさ、青いチェックのシャツ、どこにしまった?」とか、
「賞味期限が過ぎちゃったプリン食べられるかな?」とか…。
一緒に暮らした2年間、私が彼を甘やかした。
だから仕方がないと、自立を見守る母親のような気持ちで彼に接した。
「あのさ、なんか最近眠れないんだ」
「どうしたの?」
「この部屋にいるみたいなんだよね。幽霊…」
「幽霊?」
「うん。君と暮らしていたころは感じなかったけどさ、夜中に気配を感じるんだ。何だか怖くてさ。仕事も手につかないんだ」
ケンちゃんはフリーターだ。今までいくつ仕事を変えたかわからない。
またクビになっても可哀想なので、夜に彼のアパートを訪ねた。
幽霊の気配など、かけらもない。
代わりにあったのは、たまりにたまった洗濯物と散らかった部屋だ。
私は掃除と洗濯をして、何日か分の食事を作って帰った。
こんな風に、彼の世話をしてしまう私にも問題がある。
そういうのが嫌で別れたのに、情に流されやすい私が悪い。
だけど帰るとき、いちおう言う。
「もう別れたんだから、二度と連絡しないでよ」
その日を境に、ケンちゃんからの連絡が、本当に途絶えた。
連絡がないならないで、それも心配だ。
もしかして病気?ケンちゃん、酔っぱらっても平気でお風呂入るから…。
いろいろ考えるうちに、ひどく心配になった。
だけど私から連絡するのは避けたい。だからとりあえず彼のバイト先に行ってみた。
駅前のファミレスに、ケンちゃんはいなかった。
「やめたんだよ。っていうか、来なくなっちゃったんだよ。遅刻もしょっちゅうだし、もうクビだな」
いよいよ心配だ。
私はケンちゃんのケイタイに電話をかけた。
しかし何度鳴らしても出なかった。
気が付くと、私はケンちゃんのアパートに来ていた。
鍵は開いていた。彼はいつも鍵を閉め忘れる。
「ケンちゃん、いるの?」
急いで中に入ると、ケンちゃんは元気だった。
そしてケンちゃんの隣に、若い女が寄り添っていた。
女は、私が忘れていったエプロンを、自分のもののように使っていた。
「あなたがケンジの元カノね。しつこく電話してきたりして、どういうつもり?」
女が私に攻撃的な目を向けた。
ケンちゃんは、困ったように頭をかいている。
「ケンジは迷惑してるのよ。もう彼の周りをうろつかないで」
ヒステリックにわめく女の後ろで、ケンちゃんが気まずそうに「ごめん」という手振りをした。
きれいに片付いた部屋。テーブルに並んだ料理。
そういうことだ。
私はもう必要ないから、ケンちゃんは連絡をしなくなった。
やっぱり最低の男だ。別れて正解だ。
それなのに、何故だろう。
涙が止まらない。


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別れて3か月経つのに、ケンちゃんはいまだに私に電話をしてくる。
「あのさ、青いチェックのシャツ、どこにしまった?」とか、
「賞味期限が過ぎちゃったプリン食べられるかな?」とか…。
一緒に暮らした2年間、私が彼を甘やかした。
だから仕方がないと、自立を見守る母親のような気持ちで彼に接した。
「あのさ、なんか最近眠れないんだ」
「どうしたの?」
「この部屋にいるみたいなんだよね。幽霊…」
「幽霊?」
「うん。君と暮らしていたころは感じなかったけどさ、夜中に気配を感じるんだ。何だか怖くてさ。仕事も手につかないんだ」
ケンちゃんはフリーターだ。今までいくつ仕事を変えたかわからない。
またクビになっても可哀想なので、夜に彼のアパートを訪ねた。
幽霊の気配など、かけらもない。
代わりにあったのは、たまりにたまった洗濯物と散らかった部屋だ。
私は掃除と洗濯をして、何日か分の食事を作って帰った。
こんな風に、彼の世話をしてしまう私にも問題がある。
そういうのが嫌で別れたのに、情に流されやすい私が悪い。
だけど帰るとき、いちおう言う。
「もう別れたんだから、二度と連絡しないでよ」
その日を境に、ケンちゃんからの連絡が、本当に途絶えた。
連絡がないならないで、それも心配だ。
もしかして病気?ケンちゃん、酔っぱらっても平気でお風呂入るから…。
いろいろ考えるうちに、ひどく心配になった。
だけど私から連絡するのは避けたい。だからとりあえず彼のバイト先に行ってみた。
駅前のファミレスに、ケンちゃんはいなかった。
「やめたんだよ。っていうか、来なくなっちゃったんだよ。遅刻もしょっちゅうだし、もうクビだな」
いよいよ心配だ。
私はケンちゃんのケイタイに電話をかけた。
しかし何度鳴らしても出なかった。
気が付くと、私はケンちゃんのアパートに来ていた。
鍵は開いていた。彼はいつも鍵を閉め忘れる。
「ケンちゃん、いるの?」
急いで中に入ると、ケンちゃんは元気だった。
そしてケンちゃんの隣に、若い女が寄り添っていた。
女は、私が忘れていったエプロンを、自分のもののように使っていた。
「あなたがケンジの元カノね。しつこく電話してきたりして、どういうつもり?」
女が私に攻撃的な目を向けた。
ケンちゃんは、困ったように頭をかいている。
「ケンジは迷惑してるのよ。もう彼の周りをうろつかないで」
ヒステリックにわめく女の後ろで、ケンちゃんが気まずそうに「ごめん」という手振りをした。
きれいに片付いた部屋。テーブルに並んだ料理。
そういうことだ。
私はもう必要ないから、ケンちゃんは連絡をしなくなった。
やっぱり最低の男だ。別れて正解だ。
それなのに、何故だろう。
涙が止まらない。

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ハッピーバースデー [コメディー]
誕生日(その1)
今日は、綾瀬フミの誕生日だ。
「ハッピバースデートゥーユー♪」と、ふたりの孫が歌っている。
ケーキにはろうそくが8本。
1本10年。フミは、今年で80歳だ。
「おめでとう、おばあちゃん」
「おめでとう、母さん」
「おめでとうございます。お義母さん」
息子夫婦と孫が、笑顔で言ってフミに花束を渡した。
「さあ早く、ろうそくを吹き消して」
孫たちにせかされて、フミがふうっとろうそくの火を吹き消す。
拍手のあと、電気がパッとついた。
「みんな、ありがとうね」
フミが言うと、4人はきっちり整列して深くお辞儀をした。
「いいえ綾瀬様。こちらこそ、ご利用ありがとうございました。」
「あれ?もう終わり?ケーキ食べていかないのかい」
「それは別料金になりますので。ケーキ代、花代、4人分の出張費は後ほど請求書を送らせていただきます。では、失礼いたします」
バタンとドアが閉まった。
来年は、オプションをつけようかね…とフミはため息まじりにつぶやいた。
誕生日(その2)
里香「ハッピーバースデー、美紀」
真由「いちばん最初に三十路になった感想はどう?」
美紀「もう、いやなこと言うわね。まあ、一番先に30になったんだから、結婚も私が一番ね」
里香「ああ、それはないわね。実はあたし昨日彼からプロポーズされたの」
真由「ええ?里香も?実は今日言おうと思ってたんだけど、私6月に結婚するの」
里香「わあ、おめでとう。真由、20代で結婚できるわね」
真由「うん。私絶対20代で結婚したかったから、ホントによかった。里香は?」
里香「たぶん10月に結婚するわ。あたし11月生まれだからぎりぎり20代で結婚できるわ」
真由「よかったね。やっぱり20代で結婚したいわよね」
里香「うん。ぜったい20代よ。20代で結婚できてよかったわ」
真由「あれ?美紀、どうかした?」
里香「なんか、怒ってる?」
誕生日(その3)
もしもし、母さん、誕生日おめでとう。
忙しくてなかなか帰れないから、電話でごめんよ。
母さんも、もう60なんだから、あんまり無理するなよ。
おれは大丈夫。ちゃんとやってるよ。うん。仕事も順調だよ。
実は今も仕事中。
今?ホシのアジトに潜入してるんだ。麻薬の取引現場だよ。
あ、銃声聞こえた?そう、おれが撃ったの。
平気だよ。そう簡単に当たらないから。
あっ、ちょっと待ってて。
…もしもし。うん、大丈夫。今捕まえた。
ほら、手錠をかけた音だよ。
ん?大きい音?ああ、暴れた犯人を黙らせたんだよ。
平気だよ。わかってるって。ちゃんと手加減したよ。
そんなわけでさ、忙しくて当分帰れそうにないや。
じゃあ元気でね。
ハッピーバースデー!

誕生日ネタ3連発でした。なぜ誕生日?
じつは、今日は私の誕生日なんです。
いえいえ、プレゼントなど結構ですよ。どうぞお気遣いなく(笑)
そうですか…そんなに言うならいただきましょう。
これをぽちっとね^^ ↓

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今日は、綾瀬フミの誕生日だ。
「ハッピバースデートゥーユー♪」と、ふたりの孫が歌っている。
ケーキにはろうそくが8本。
1本10年。フミは、今年で80歳だ。
「おめでとう、おばあちゃん」
「おめでとう、母さん」
「おめでとうございます。お義母さん」
息子夫婦と孫が、笑顔で言ってフミに花束を渡した。
「さあ早く、ろうそくを吹き消して」
孫たちにせかされて、フミがふうっとろうそくの火を吹き消す。
拍手のあと、電気がパッとついた。
「みんな、ありがとうね」
フミが言うと、4人はきっちり整列して深くお辞儀をした。
「いいえ綾瀬様。こちらこそ、ご利用ありがとうございました。」
「あれ?もう終わり?ケーキ食べていかないのかい」
「それは別料金になりますので。ケーキ代、花代、4人分の出張費は後ほど請求書を送らせていただきます。では、失礼いたします」
バタンとドアが閉まった。
来年は、オプションをつけようかね…とフミはため息まじりにつぶやいた。
誕生日(その2)
里香「ハッピーバースデー、美紀」
真由「いちばん最初に三十路になった感想はどう?」
美紀「もう、いやなこと言うわね。まあ、一番先に30になったんだから、結婚も私が一番ね」
里香「ああ、それはないわね。実はあたし昨日彼からプロポーズされたの」
真由「ええ?里香も?実は今日言おうと思ってたんだけど、私6月に結婚するの」
里香「わあ、おめでとう。真由、20代で結婚できるわね」
真由「うん。私絶対20代で結婚したかったから、ホントによかった。里香は?」
里香「たぶん10月に結婚するわ。あたし11月生まれだからぎりぎり20代で結婚できるわ」
真由「よかったね。やっぱり20代で結婚したいわよね」
里香「うん。ぜったい20代よ。20代で結婚できてよかったわ」
真由「あれ?美紀、どうかした?」
里香「なんか、怒ってる?」
誕生日(その3)
もしもし、母さん、誕生日おめでとう。
忙しくてなかなか帰れないから、電話でごめんよ。
母さんも、もう60なんだから、あんまり無理するなよ。
おれは大丈夫。ちゃんとやってるよ。うん。仕事も順調だよ。
実は今も仕事中。
今?ホシのアジトに潜入してるんだ。麻薬の取引現場だよ。
あ、銃声聞こえた?そう、おれが撃ったの。
平気だよ。そう簡単に当たらないから。
あっ、ちょっと待ってて。
…もしもし。うん、大丈夫。今捕まえた。
ほら、手錠をかけた音だよ。
ん?大きい音?ああ、暴れた犯人を黙らせたんだよ。
平気だよ。わかってるって。ちゃんと手加減したよ。
そんなわけでさ、忙しくて当分帰れそうにないや。
じゃあ元気でね。
ハッピーバースデー!

誕生日ネタ3連発でした。なぜ誕生日?
じつは、今日は私の誕生日なんです。
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