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クリスマス・イルミネーションデート [男と女ストーリー]

キラキラしたものは好きだけど、イルミネーションはきらい。
クリスマスは好きだけど、お祭り騒ぎはきらい。

夕方の駅は、人が多すぎて目眩がしそうよ。
こんなところに私を呼び出すなんて、テツオもずいぶん偉くなったものだわ。
テツオはね、私の幼なじみなの。
一緒にクリスマスを過ごすのは、もう10回以上だわ。
小学校のクリスマス会も入れたら…だけどね。

大通りに続く並木道はシャンパンゴールド。
どこまでも続く光の道ね。
きれいだけど、どうしても造りものに思えてしまうの。

テツオが来た。キョロキョロしている姿がマヌケで笑えるわ。
声はかけないの。だってこっちが先に見つけたなんて悔しいもん。
キョロキョロしているから、外人さんに道を尋ねられてるわ。
へえ、英語出来るんだ。中学の時は私の方が成績よかったのに。

「リカ!」
「3分20秒の遅刻ね」
「今、そこで外人に道聞かれちゃった」
知ってる。見てたから。
「さあ、行こうか」
「どこに行くの?」
「おしゃれなレストラン。スイーツが美味しいんだって」
ふーん。松屋の団子が世界一って言ってるテツオがスイーツだって…。
「会社の同期の子が教えてくれたんだ。予約もしたよ」
同期の子?
「あ、先輩からライン。飲みに行こうってしつこいんだよな。この前なんかカラオケでさ、同じ曲を何度も歌うんだ。5回目にはさすがにトイレに逃げたよ」

就職してから、テツオの世界は広がった。
私の世界は変わらない。
家から10分のお弁当屋さんで、9時から15時までのアルバイト。
それだけ。あーあ。

「リカ、どうしたの? 空に何かあるの? UFOでも見えた? それとも、また変な妄想してるの?」
「星が見えないわ」
「うん。曇ってるね」
「みんながイルミネーションばかり見てるから、悲しくなってどこかへ行っちゃったのよ」
やだ。ちょっと泣きそう。ばれないように、しばらく上を見ていよう。

「リカ、おしゃれなレストランやめようか。ケーキとチキン買って家で食べようか」
「だって、同期の可愛い女の子に教えてもらったんでしょう」
「えっ、いやたしかに同期の女の子だけど、全然可愛くないよ。あ、全然ではないけど、普通だよ。いや、そういうことじゃなくて、リカが人混み苦手なことも、こういうイベントが嫌いなことも知っているのに、なんかひとりで浮かれてごめん」
テツオは、ちっとも悪くないのに、いつも謝るの。
我儘な私は、いつかテツオの世界から排除されてしまうのかしら。

星のない空から、白いものがふわりと落ちてきた。
黒い空から、無数の白いものたちが落ちてくる。きっと星の反乱よ。
「リカ、雪だよ」
テツオが珍しくはしゃいだ声で言った。
まわりの人たちも、いっせいに空を見上げている。「雪だ」「わあ、雪だ」
「見て、テツオ、今まで夢中でイルミネーションを見ていた人たちが、みんな雪を見ているわ。自然が人工の物に勝った瞬間よ。雪の勝利よ」
「えっ、何の勝負だよ」
「ああ、お腹が空いた。早くテツオが予約したスイーツの美味しいレストランに行きましょう」
「…いいの?」
「うん。だって、大して可愛くもない同期の女の子が教えてくれたんでしょう」

テツオとふたりで、雪の街を歩いた。
イルミネーションたち、卑屈になることはないわ。
今回は雪に負けたけど、あなたたちも充分に美しいわ。

テツオは、スイーツが美味しいおしゃれなレストランで、照れながらプレゼントをくれた。
小さな宝石がついた、細くて可愛い指輪。
イルミネーションよりも、星よりも雪よりも、間違いなく輝いている。
「今夜の勝者は、ダントツでテツオね」
「だから、何の勝負だよ」

悔しいけど認めるわ。
世界でいちばん大切な幼なじみは、世界でいちばん大切な恋人になったの。

***
テツオとリカのシリーズも6作目になりました。
6作目にして、やっと一歩前進ね。
前作をお読みになりたい方はこちらからどうぞ。
熱帯夜妄想デート
初詣わがままデート
新緑ドライブデート
七夕、星空デート
春爛漫、さくらデート


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コメント 4

まるこ

リンさん、おはようございます。

なんだこの上から目線の彼女は・・・!って
思いながら読みましたが、シリーズものだったのですね。
(リンクから全話、読みました^^)
典型的なツンデレ彼女でした(笑)
でもテツオをすごく好きっていう気持ちが
しっかり伝わってくるので、素直じゃないトコが逆に
可愛いなーと思ってしまう。
世の中、尽くし方より、こういう女性の方がきっと愛されるんだろうなー(笑)
by まるこ (2016-12-22 10:19) 

リンさん

<まるこさん>
ありがとうございます。
全部読んでくれたのね。ありがとう。
そうなんです。
リカちゃんは極度の人見知りでちょっと変わった女の子。
テツオ以外に彼女を理解できる人はいないのです。

このシリーズは、書いていてとても楽しいです。
ふたりが結婚するまで続けようかな~^^
by リンさん (2016-12-24 14:01) 

海野久実

セリフと心の声のバランスが絶妙ですね。
リカちゃんみたいな女の子って、なかなかいないと思うな。
付き合ってると疲れるかもしれないけれど、別れちゃうとしばらく立ち直れないかも。
まあ、テツオくんならうまくやれそうだからお任せします(笑)

by 海野久実 (2016-12-24 18:41) 

リンさん

<海野久実さん>
ありがとうございます。
たしかに、この子のことを理解できる男性は少ないでしょうね。
振り回されるのも、楽しいのかもしれませんんね。
by リンさん (2016-12-27 21:02) 

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