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25年目のクラス会

久しぶりに降りた故郷の駅は、閑散としていた。
6番のバス乗り場に行くと、懐かしい面影がベンチに座っていた。
「先生」
声をかけると、先生は「やあ」と右手を上げた。
「今日はクラス会だね」
「そうですね。卒業して25年目のクラス会です」
「みんな変わったかな」
「ええ、15歳だった少年少女が、40歳の中年ですもの」

 あの頃の先生は25歳の若い教師で、女生徒たちの憧れだった。
若い分、私たちの気持ちをよくわかってくれて、男子生徒にも人気があった。
私の初恋も先生だった。世界中で、先生が一番好きだった。
「俺もすっかりしょぼくれた中年オヤジだよ」
「先生は今でも素敵です。前にお会いした5年前のクラス会のときと、全然変わってないわ」
「君は元気なのか?」
「この5年間に、いろいろありました。両親が相次いで亡くなって、実家を売りました。3年前です。だからこの町に来るのは3年ぶりです」
「そうか。それは大変だったね。俺は、相変わらずだよ。教師を辞めてから、塾の講師で細々と食ってる」

バスは来ない。
タクシーの運転手が、退屈そうに欠伸をしている。
閑散とした駅のロータリーで、私たちは日暮れまで話をした。

「そろそろ、クラス会が終わるね」
先生の足元に、ポプラの長い影が落ちる。
バスは来ない。来るはずがない。6番の路線バスは廃線になった。
どちらからともなく、手を握り合う。
大きくて、ごつごつした大人の手が好きだった。
しばらくそんな余韻を楽しんだ後、私はゆっくり絡み合った手をほどいた。

「先生、もう終わりにしましょう」
先生は答えなかった。
「私、結婚します。優しい人です。こんな私でもいいと言ってくれました」
「そうか」

25年前、先生と私は愛し合った。
25歳と15歳の恋が認められるわけもなく、私たちは心中事件を起こした。
それは未遂に終わったが、それからすべてが変わってしまった。
先生は教師を辞め、私は遠くの親戚の家で、半分監禁されたような学生時代を過ごした。
5年に一度行われるクラス会の日、私たちはこうして、ふたりだけで逢っている。
私たちが、クラス会になど、呼ばれるはずがない。

「5年後は、もう来ません」
立ち上がった私を見上げる先生は、一気に老けた老人のように見えた。



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あべせつ

りんさんの描かれる女性は、いつも一途で、とてつもなく長い時間、男性を待っていたり、想い続けていらっしゃいますよね。

今回の主人公も新たな人生を迎えるために25年もかかったのですね。

五年後との約束を、違わずにお互いが会い続けたのは、贖罪なのか、好奇心なのか、傷の舐めあいなのか、
当人たちにしか、わからない心境なのでしょう。

現実世界では、我が町でも昔、川での心中未遂事件がありましたが、女性だけが生き残り、さらにはその女性が半年も経たぬうちに再婚をしたので、みな、呆気にとられ、「あの心中はなんだったんだ」
「女は強い」と噂になりました(^_^;)
by あべせつ (2017-04-16 16:12) 

dan

同窓会に出席する先生と生徒、さりげなく登場した
二人の関係がこんなに複雑で深刻だったとは。
つい引き込まれてドキドキしながら読みました。
私こういうの好きなんですよね。ほほほ。
最後の二行が特に好きです。
by dan (2017-04-16 17:17) 

あべせつ

再コメント、すみません。

danさんのコメントを拝読して、今気づきました(^_^;)

再会した時には、五年前と変わらぬ姿に見えていた、つまりは主人公の想いも以前のままだったのですが、

繋いだ手をほどいた時が、心も離れた時を表し、

別れを告げて改めて見てみれば、そこで始めて現実が見えた。

この短いストーリーの中で、主人公の心情の移ろいが、見事に表されていてスゴイ!と思いました。



by あべせつ (2017-04-16 18:35) 

hitoyasumi-hiro

名作ですね。
心がせつなくなりました。
初めから、バス乗り場で「今日はクラス会だね」と言う、微妙な違和感。
そして夕暮れまで語り合うところで、いよいよ「?」のピーク。
悲しい二人だったんですね。
せつさんの言うように、主人公の長い時間をかけた思いの変化が、絶妙に表現されていると思いました。
コメディーあり、おどろきのオチあり、そして、こういう人間ドラマあり。
りんさん、ほんとにプロですよ!
いまのうちにサインもらっときたい(笑)

by hitoyasumi-hiro (2017-04-16 22:45) 

ぼんぼちぼちぼち

こういう話しって現実にもあるかも知れないなあと思いやした。
先生、ちょっと可哀想、、、
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-17 11:34) 

たまきち

25才と15才の恋
現実にも、ありそうですね。

一途な思いが年月とともに変化したのは女性の側なのかな。
現実的なのはいつも女性の側なのかもしれないと思いました。
by たまきち (2017-04-17 12:54) 

雫石鉄也

見事です。
傑作です。ショートショートのお手本のような作品です。
さすが、りんさん。
起承転結もきっちりと決まってます。
なにげない出だし。
二人の登場人物の関係が簡潔かつ的確に記述されていいる。
「バスは来ない」で、あれっと思わせる。ここも
「バスが来ない」ではなく「バスは来ない」としたのも見事です。
「バスが来ない」ですと、事故か渋滞でバスが来ないということですね。
「バスは来ない」としてことで、バスはいつまで待っても来ないと読み取れるわけです。ここがラストへの伏線になっているわけですね。と、きて意外なラストへとつながるわけです。
見事です。さすが。
by 雫石鉄也 (2017-04-17 13:44) 

海野久実

いいですね。
これは短いけれど、その短さを含めて、完成度の高い傑作です。
もっと書き込んで長くすればよくなると言う作品ではないんですね。
それにすごく映像的ですね。
ありありと駅前の情景と、時間の移り変わりによる光の変化が見えます。
短編映画一本を見たような余韻です。

by 海野久実 (2017-04-18 15:24) 

まるこ

リンさん、こんにちは。
とっても穏やかな空気が漂っていたので
ほっこりとした初恋話のオチになるのかしら???って
思って読んでいたら。。。
真実がとっても衝撃で、想像してなかった結末でした。
結婚という形でようやく自分の道を歩いていこうとする
私に対して、ラスト一行の先生の様子がとても寂しい><
by まるこ (2017-04-19 11:31) 

リンさん

<あべせつさん>
2つもコメント、ありがとうございます。
せつさんの周りには、小説になりそうな方がたくさんいますね。
(前の菩薩のような女性も)

ふたりがクラス会の日に逢うのは、最初は偶然だったのかもしれません。それからは何となく、5年に一度逢うようになったのかも。
もう恋人という感情ではないかもしれませんね。
by リンさん (2017-04-19 14:40) 

リンさん

<danさん>
ありがとうございます。
最初は、単なるクラス会で再開する先生と生徒の予定だったのですが、書いているうちに変わってきました。
danさん好みのお話になって、私もうれしい^^
by リンさん (2017-04-19 14:45) 

リンさん

<ひと休みさん>
ありがとうございます。
いえいえ、プロだなんてとんでもありません^^
晩胸中です。


by リンさん (2017-04-19 14:55) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
10歳の年の差は、大人なら何でもないですが、中学生はマズいですね。悲しい純愛です。
by リンさん (2017-04-19 15:00) 

リンさん

<たまきちさん>
ありがとうございます。
このふたりが一緒になるという選択肢はなかったんですね。
けっきょく終わった恋だったのかもしれません。
女性が見限らなければ、ずるずる続いたかもしれません。
by リンさん (2017-04-19 15:08) 

リンさん

<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
そんなに褒められると木に登りますよ^^

ふたりの再会場所に、なぜか6番のバス停が浮かびました。
夕方まで話をするために、廃線になったことにしました。
言葉の使い方って、細かいですが大切ですね。
by リンさん (2017-04-19 15:17) 

リンさん

<海野久実さん>
ありがとうございます。
映像が浮かぶと言っていただけるのは、なんとも嬉しいことです。
もっと会話を増やそうか迷いましたが、これでよかったですね^^

by リンさん (2017-04-19 15:27) 

リンさん

<まるこさん>
ありがとうございます。
一度の恋愛で人生が変わってしまうことってありますね。
もう少し器用に生きられたら、25年も経たずに変われたかもしれませんね。

by リンさん (2017-04-19 15:32) 

あべせつ

クラブmottomo自体が更新されないので、どうしたのかな?と、公募ガイドさんのツイッターやHPの「スタッフブログ」を拝見しますと

今月号からの新企画でてんやわんや、さらにはゴールデンウィーク対応で入稿〆切でてんやわんやとのお話が書いてありました(^_^;)

さらには!「社長ブログ」で社長さんが資金繰りの大変さや、社員がどんどん辞めていくといった落ち込む気持ちを書いておられましたですよ( ´△`)

今、すごーく大変そうなので、しばらくはそっとしておいた方がいいかもしれません(((^_^;)
by あべせつ (2017-04-19 16:36) 

はる

りんさん素敵な作品ですね。
朗読のお願いです。
どうぞよろしくお願いします。
by はる (2017-04-19 20:51) 

SORI

リンさんさん おはようございます。
バスが来なくて日暮れまで話した。であれ!
青春の出来事から25年が経ったのですね。
不思議と引きつけられる心地よい物語です。
by SORI (2017-04-20 07:05) 

リンさん

<あべせつさん>
ありがとうございます。
そうでしたか。そんな事情が!
社長さん、赤裸々に語っているんですね。
いい雑誌なので、ぜひとも頑張っていただきたいですね。
by リンさん (2017-04-20 18:09) 

リンさん

<はるさん>
ありがとうございます。
朗読よろしくお願いします^^
by リンさん (2017-04-20 18:10) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
25年経って、やっと気持ちに一区切りですね。
先生はちょっと可哀想ですが。
by リンさん (2017-04-20 18:11) 

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