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おやゆび姫育成キット [コメディー]

夫が、チューリップの鉢植えと「おやゆび姫育成キット」を買ってきた。
夫はこういう変わったものが好きで、前にも「100万コに1コ、桃太郎が入っている桃」とか、「運がよければかぐや姫に逢える竹」とか買ってきた。
今回もどうせまがい物だろうと思いながらも、花がきれいだったから育てた。

育成キットはいたって簡単。
小さな粒を花の真ん中に置き、あとは特殊な培養液と水を与えるだけ。
子供だましだと思ったが、二日後、粒がうようよ動き出した。
それはだんだん形を変えて、人間に近づいていく。
前に姉に見せてもらった、胎児の画像に似ている。
そして三日後、チューリップの真ん中に、可愛らしい赤ちゃんが誕生した。
だけどそれは、なぜか上半身しかない。
「ねえ、どうして足がないのかしら」
「歩き回ると厄介だからだろう。あくまで観賞用だから」

夫は観賞用と言ったけれど、それは日に日に成長した。
どうやら1日1歳成長するらしく、生まれて2日目に言葉を話した。
「ママ」
なんて愛らしいのでしょう。
いつまでも花の上では安定が悪いので、専用の台座(オプションで1万円)に置いた。
成長しても大きさは親指ほどしかない。小さな人形みたいで、とても可愛い。
オプションで洋服も売っていたが、高いので自分で作った。
レースのワンピース、ピンクのドレス。
私とお揃いのブラウスも作った。チューリップの刺繡よ。
毎日違う服を着せた。着せ替え人形みたいで楽しい。
「ママ、可愛いドレスをありがとう」なんて言われると、抱きしめたくなる。

異変が起きたのは、育成を始めて15日目のことだ。
おやゆび姫の声が低くなり、口の周りにうっすら髭が生えた。
「あなた、おやゆび姫が変よ。ほらみて、髭が生えたわ。不良品かしら」
夫は「ちょっと待って」と、育成キットの説明書を取り出した。
「あ…、こいつ、オスだった」
「はあ? 男? 姫じゃないじゃん!」
「髭剃りは、専用の物を使ってくださいだって。オプションで3万2千円」
「冗談じゃないわよ!」

45日が過ぎた。
ロン毛で無精ひげのおやゆび野郎が、今朝も私に話しかける。
「ママ、おはよう。いい朝だね」
「おはよう、おっさん。二度とママって呼ばないでね」
「じゃあ奥さん、オプションでイケメンになる薬売ってるけどどう? 5万円で」
「もういい!!」

KIMG0100.JPG


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コメント 8

海野久実

「おやゆび姫育成キット」!(^^)!
タイトルだけでぶっ飛んでしまいました。
これは何かあやかったお話を書いてみたくなるインパクトがありますね。

さらに。
SORIさんのコメントの「鬱雲丹」(うつうに)って、なんでしょう?
思わずググってしまいました。
どうやら、うつ病のウニではなくって「普通に」のミスタッチではないかと言う結論になりました。
この誤変換もインパクトがありましたね。

by 海野久実 (2017-04-22 17:30) 

dan

「おやゆび姫育成キット」
私もぶっ飛びました。分かっているつもりなのに
リンさんの発想の天才的なところ、ただただ感服するだけで
おばあさんはとてもついていけません。
でもやっぱり面白かったのかなあ。
by dan (2017-04-22 22:43) 

SORI

リンさんさん こんにちは
驚きの物語です。おやゆび姫育成キットが自然に出てくるところがすごいです。
おやゆび姫がどんな物語だったか、忘れていてので調べてみました。Wikipediaに書かれていた下記の内容を読んで思い出しました。

親指姫は、チューリップの花から生まれた親指ほどの大きさしかない小さい少女である。ある日、ヒキガエルに誘拐されてしまう。魚達の助けで何とか脱出するものの、その後、コガネムシに誘拐され、更に置き去りにされてしまう。秋になり、親指姫はノネズミのお婆さんの許に居候する。しかし、隣の家の金持ちのモグラに結婚を強要される。しかしモグラの家にいた瀕死のツバメを介抱し、結婚式の日に親指姫はツバメと共に、花の国へ行く。そこで親指姫は、花の国の王子様と結婚する。

by SORI (2017-04-23 02:36) 

たまきち

ははは。
笑いました。
老後の楽しみにこんなのがあると楽しいなと真面目に思いました。
自分が先に逝くと後に残されたペットが可愛そうだから (ペットを)飼わないと言う人が けっこう周りにいるんですよ。
by たまきち (2017-04-23 06:00) 

hitoyasumi-hiro

ぼくもぶっ飛びました(笑)
「おやゆび野郎」なんて、爆笑をこらえるのに必死でした。
天才です。まさに。
<(_ _)> ←ははあ、と土下座している。

by hitoyasumi-hiro (2017-04-24 08:38) 

雫石鉄也

おやゆび野郎の成長は早い。
またたくまに、わたしのトシを追い越した。
そして、とうとう父の年代の男になった。
頭はほとんど毛がなく、かわりに胸毛が生えている。
「奥さん」
おやゆび野郎、いや、おやゆびオヤジが私の方を見て、ガラッとした声でいった。
「奥さん、ちょっとこっちへおいでよ」
ぎろりと黄色っぽい目でこちらをにらんだ。ものほしそうな表情だ。
「ねえ、奥さんよう、さっき、掃除器かけてるとき、胸の谷間が見えたよ。奥さん、色っぽいね」
おやゆびオヤジは植木鉢に植わっている下半身を指さしていった。
「ちょっと、ここをさわってよ」
思わず後ずさった。
「なんとかしてよ。ワシ、火がついてしまったよ。 奥さん、ツミだよ」
こんなことが何回もあった。海外に出張中の夫に電話した。夫はあと1ヶ月は帰って来ない。
「あの育成キット捨てるよ」
事情を話すと、夫は同意してくれた。
わたしは、おやゆびオヤジに手を伸ばした。
「うひひ、奥さん、やっとその気になってくれたか」
異変が起こった。おやゆびオヤジが立ち上がった。植わっているはずの下半身があらわになった。下半身は裸だった。そこには・・・。

昨日、海外出張から帰った、吉田吉朗さん(37)が、自宅にはいると、妻の吉田時子さん(32)が居間で倒れていた。時子さんはその場で死亡が確認された。なお、身長15センチほどの小生物がそこに倒れていた。

本誌独占スクープ。世田谷の若妻殺人事件の現場にあった小生物の死体とはこれだ。
ごらんのように、これは小人と思われる。この21世紀の日本に妖精?

この事件は世田谷コティングリー妖精事件といわれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%A6%96%E7%B2%BE%E4%BA%8B%E4%BB%B6
by 雫石鉄也 (2017-04-24 14:03) 

あべせつ

奇想天外、楽しいお話で面白かったです(^○^)

りんさんの引き出しには感服致します。

このお話を拝読して、星新一先生の「アフターサービス」を思い出しました。

新型の毛生え薬を頭に撒くと、植物性の毛が生えて
、緑色だから専用のヘヤカラーを、まとまらないから専用の整髪剤をなどと言って、色々売り付けられる落語のようなテイストの面白いお話でした。

最後には、辟易して元通りの頭にしてしまうのですが、
りんさんの親指オヤジは、あえて「そのまま放置」というオチには笑ってしまいました。(^○^)

by あべせつ (2017-04-24 19:15) 

ぼんぼちぼちぼち

あまりにも意外な展開に笑ってしまいやした。
性転換手術のオプションとか、ものすごく高そーでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-24 20:52) 

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