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いつか人間に [ファンタジー]

次に生まれ変わるときは、絶対人間になりたかったのに…。

わたしはハムスターになった。
行きつく先のない回し車の上を、ただひたすらに走り続ける毎日だ。
なんて狭い世界だろう。なんてちっぽけな命だろう。

わたしはかつて、陸上選手だった。
誰よりも早く走り、オリンピックを目指していたが、戦争によって命を落とした。
生まれ変わってまた走りたいと願ったら、わたしは犬になった。
広い草原で、飼い主が投げたボールを走って拾いにいくのが、なにより楽しかった。
だけど四つ足で走るのは、やはり違うと感じた。

次にわたしは鳥になった。
翼を広げ、大空を飛ぶのは素晴らしかった。
風に身をまかせ、自由を満喫した。
だけどやはり、わたしは大地を走りたかった。

そして今度こそはと思ったのに、よりによってハムスターだ。
プラスチックのケージに入れられて、ここから出ることも許されない。
もっとも、小動物にとって外の世界がどれだけ危険かは知っている。
犬や鳥だった経験から、身に染みてわかる。
だから、この回し車の上をひたすら走り続けることが、今のわたしの全てなのだ。

飼い主は、いつも白い服を着た清潔な優しい女だ。
ときどきわたしを手のひらに乗せてくれる。
結婚をしたことはないが、女の温もりは知っている。
優しくて柔らかくて気持ちいい。

小動物の命は短い。わたしはきっと、まもなく死ぬだろう。
もしも人間に生まれ変われたら、この清潔で優しい女性のような人と結婚したい。
わたしは、彼女の手のひらで、そんな夢を見るのだった。
そしてわたしは、やはり走りたい。
出来ることならオリンピックの舞台に立ちたい。
神様、お願いです。今度こそは人間に生まれ変わりたいのです。

「教授、ハムスター、今日で7年6カ月です」
「そうか。薬が効いているようだな」
「はい。ハムスターの寿命をはるかに超えています。きっとまだまだ生きますよ」
「実験は成功だ。次はもっと大きな動物で試してみよう」
「はい、教授。人間の不老不死も夢ではありませんね」

カラカラカラ…
永遠の命を手に入れたハムスターは、今日も回し車の上を走っている。

KIMG0057.JPG
うちのハムちゃん。
長生きしてね~^^


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ひと休み

「白い服を着た」のところで、実験動物なんだな、殺されちゃうんだろうな、と思ったら、
なんとなんと!
驚きあり、ペーソスあり、そして愛あり。
すてきな小品でした。
傑作だと思いますd=(^o^)=b
by ひと休み (2017-05-03 12:46) 

ぼんぼちぼちぼち

不老長寿もとどのつまりは悲しいんだなぁ(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-03 21:45) 

SORI

リンさんさん こんばんは
永遠の命を手に入れたハスターちゃんになってしまったのですね。予想外の展開に驚かされました。
by SORI (2017-05-04 19:36) 

傍目八目

 こ、これは……ブラックだわ。主人公が嫌な奴だったら風刺的に楽しめるけれど、この「わたし」の場合はちょっと可哀相。
 「永遠」ではなくて、薬は未完成でハムスターの死期が近いことを、博士と助手の会話で匂わせては? 助手は、その事実に寂しさと共に安堵を感じる気がします。
 生まれ変わりがある世界設定だと、それだけである意味不死なので、同じ姿で生き続けるのは、むしろ呪縛なのではないでしょうか。
by 傍目八目 (2017-05-05 07:43) 

リンさん

<ひと休みさん>
ありがとうございます。
実験動物だとバレましたか。やっぱり^^;
うちのハムちゃんも、実は実験動物でした。
心理学の実験だったらしいです。
by リンさん (2017-05-05 20:53) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
そうですね。やっぱり自然に逆らってはいけませんね。

by リンさん (2017-05-05 20:55) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
ハムスターの寿命は2,3年なんですよね。
うちのハムちゃんは、大人になってから家に来たので、出来るだけ長く生きて欲しいなと思います。
by リンさん (2017-05-05 20:56) 

リンさん

<傍目八目さん>
ありがとうございます。
カテゴリーがファンタジーなのに、ブラックなコメディになってしまいました(笑えない?)
確かに、可哀想ですね。
うーん、実験は成功したはずなのに、祈り続けたら神様が願いを叶えてくれるというのはどうでしょう。
「博士、ハムスターが急変です!」
「おかしいな」
というラスト。また違ったファンタジーになりますね。

by リンさん (2017-05-05 21:06) 

dan

同じ走りでも色々あって面白いですね。
主人公にはやっぱり人間に生まれ変わってオリンピックで
思い切り走らせてあげたい。
出来たら理想の女性と結婚もさせてあげたい。
でもなかなか死ねそうにないところが、いかにも哀れで
おかしいです。
by dan (2017-05-05 22:12) 

まるこ

リンさん、こんばんは。

最後の会話、ちょっと怖かったー><
そしてそのラスト2行がなんだか切ない。
ハムスターちゃん、自分の意思に反して、
勝手に永遠の命なんて授かっちゃったなんて・・・。
もう人間として走る事が出来ないって思うと
ちょっと悲しいなー。

ハムちゃん(写真)可愛いね。
私も風太(うさぎ)と一緒に暮らす前は
ハムちゃんと暮らしていました^^
by まるこ (2017-05-05 23:25) 

海野久実

永遠の命を手に入れたハムスターはやっとケージから出ることが出来た。
長い時間をかけて、何とかこじ開けたのだ。
餌をもらえなくなってからもう三か月。
それでもハムスターは死ななかった。
これが永遠の命なんだろうか。
研究室のドアは開けっぱなしだった。
所々に人間の白骨が横たわっている。
外へ出ると街は破壊尽くされ、生き物の影もなかった。
核戦争が起きたのだが、ハムスターにはそれが理解できなかった。
ただ自分が地球上でたった一つの命なのは理解していた。
ハムスターはさっきから自分が後ろ脚だけで立って歩いているのに気がついた。
体の毛が抜け始め、そしてだんだん体が大きくなっているのだった。
ハムスターは自分の前足、いや手を見た。
それはまるで人間の手だった。
あの優しい白い服を着た女の人と同じような手だ。
いや、それよりももっと力強かった。
ハムスターは人間へと猛スピードで進化していたのだ。
これもあの薬の効果なんだろうか。
ハムスターは自分が、地球の生命をただ一人で受け継いだことを何となく理解していた。
これからどうすればいいのだろうか。
ハムスターは(いやもう立派な人間の男性だった)筋肉の付いた自分の両足を見た。
「そうだ、今はとりあえず思い切り走ってみよう」
自分が人間の言葉を話しているのに気がつかないまま走り始めた。

ハムちゃん、がんばれ~

by 海野久実 (2017-05-06 16:03) 

あべせつ

まずは、りんさんのハムちゃんのキュートさに、ハートを撃ち抜かれました( ☆∀☆)プリティです♪

それから、この御作品を拝読する前日、ちょうどCSで「グリーンマイル」を見ておりましたので
永遠に生きるヒトとネズミの空恐ろしさを感じていたところでありました。

その時は、
単に「死ねない辛さ」ばかりを思っていましたが、
「生まれ変われない辛さ」に着目なされたのは、たいへん斬新だ!!!と思いました。

しかも、生まれ変わっても前世、前前世、前前前世[新月][新月][新月]の記憶を持ったままで、変われない苦痛にさいなまれ続けるなんて、どれほどの地獄でありましょうか?

りんさんは、スゴいことを思い付かれるなと思いました。







by あべせつ (2017-05-06 16:38) 

リンさん

<danさん>
ありがとうございます。
やはり志半ばで逝ってしまうと、心残りなんでしょうね。
オリンピック、行かせてあげたいですね。
by リンさん (2017-05-09 19:08) 

リンさん

<まるこさん>
ありがとうございます。
ちょっと可哀想でしたね。
永遠の命はやりすぎだったかな^^;

まるこさんの風太君可愛いですよね。
ペットショップにウサギのグッズがいっぱい売っていて、私もいつか飼いたいです。
by リンさん (2017-05-09 19:12) 

リンさん

<海野久美さん>
ありがとうございます。
SFですね。
ハムちゃん、新しい世界のアダムになったのですね。
どこかにイブがいればいいけど。
いつもステキなお話、ありがとうございます。
by リンさん (2017-05-09 19:15) 

リンさん

<あべせつさん>
ありがとうございます。
このハムちゃんも、実験用でした。
ときどき脱走を試みる野心家ハムです^^

グリーンマイルって、そういう映画なんですか。
今度借りて見てみます。
前世の記憶があるのも、辛いかもしれませんね。

by リンさん (2017-05-09 19:25) 

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