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大晦日です

みなさま、今年もお世話になりました。
読んでくださった方、コメントをくださった方、本当にありがとうございました。
すごく励みになりました。

「で、最後の話はないの?」
「すみません。何かお話を書こうと思ったのですが、なにぶん忙しくて」
「そうなの?」
「はい、年末になって、叔父の入院、知り合いのお通夜、年賀状作り、掃除や買い物、あと、ディズニーランド」
「大変だったんですね。ん?今、ディズニーランドって…」
「ああ、本当に大変でした。楽しいことなんて何も…」
「いや、今ディズニーランドって…」
「ああ、本当に大変でした。スペースマウンテンでは騒ぎすぎて声が枯れそうになったし、ミッキーの家では死ぬほどミッキーと握手したし、ステッチエンカウンターでは死ぬほど笑ったし」
「いや、すげー楽しそうだけど」
「ああ、本当に大変でした。パレードでは手を振りすぎて筋肉痛だし、シンデレラ城のプロジェクトマッピングではいい場所取るために頑張ったし」
「いや、そこまで楽しめて羨ましいわ」

そんなわけで、年明けに、何か楽しいお話を書いてアップします。
来年もよろしくお願いします。
みなさん、よいお年を!!

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明日香の庭 [ミステリー?]

私は、この庭から出られない。

いつもの朝だった。いつものように学校へ行こうとして門を出た。
しかしどういうわけか、強い力に押し戻されてしまう。
抵抗できない大きな力が、私の行く手を阻んでいる。
「明日香、何してるの?早く行きなさい」
ママに背中を押されたけれど、私のからだはびくとも動かない。
「そんなに行くのがいやなの?何かあったの?」
ママは、顔をしかめながら、「今日は休みなさい」と言った。

翌日も同じだった。
どうしても、門から外へ出られない。
パパとママは、具合でも悪いのか、学校でいじめがあるのかなどと心配したけれど、私はいたって健康だし、いじめなんてなかった。
「庭から出られないんだよ」
私がいくら訴えても、両親は困った顔をするだけだ。

先生が来た。友達も来た。
「明日香ちゃん、一緒に学校へ行こう」
誰かと一緒なら出られるかもしれないと思ったが、やはりだめだった。
私だけが取り残される。
「病院に行ってみましょう」
ママが車の助手席に私を乗せた。
車だったら出られるかもしれないと思ったが、やはりだめだ。
巨大な力で、車は門から外に出られない。
「おかしいわね。故障かしら」
「だから、庭から出られないんだよ」
「もう、明日香がおかしなことを言うから、車まで変になったわ」
ママはうんざりしたようにガレージに引き返した。
「病院は明日行きましょう。仕事を早く切り上げて帰ってくるわ」

ところが翌日、ママは帰ってこなかった。
ママだけじゃない。パパも帰ってこない。
夜になっても、私はひとりきりだった。
私が変な子だから、ふたりともどこかへ行っちゃったの?
月もない暗い庭先で、私は両親を待ち続けた。

朝が来た。ぼんやりと薄暗い朝だ。
両親は、とうとう帰ってこなかった。
寂しくて、泣きつかれて、とにかくここではないどこかに行きたいと思った。

門のところに立って、外に向かって思い切りジャンプした。
私のからだはふわりと宙に舞い上がった。
真っ暗だ。何もない。宇宙の果てに放り出されたみたいだ。
もしかして、私だけを残して世界は滅亡してしまったのか。
「パパ、ママ」
誰でもいい。私を、ここから連れ出してほしい。
新しい世界でもいい。死んだ後の世界でもいい。

急に天から大きな手が現れた。神様?この手を握れば、パパとママのところへ行けるの?
私は必死で手をつかんだ。
ぐいっと強い力で引き上げられ、私のからだはぐんぐん上に上がった。
視界が開け、まぶしい光に中に、たくさんの人がいた。
「生きてるぞ!」
誰かが叫んだ。
「生存者1名!」
激しく呼吸をくり返した。まるで今まで息をするのを忘れていたようだ。

***
「臨時ニュースです。
巨大な隕石の落下により壊滅した町の、瓦礫の中から少女が無事救出されました。
救出されたのは〇〇明日香ちゃん10歳です。
72時間ぶりに救出された明日香ちゃんは、命に別状はなく……」

たくさんの大人たちに抱えられて、明日香は庭を振り返った。
明日香を守ってくれたはずの庭は、もうどこにもなかった。
彼女が、町も友達も、そして両親をも失った悲しみを知るのは、もう少し後になるだろう。

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楽しい話を書きたかったのに、こんな話になっちゃいました。
すみません^^
今年最後のお話は、明るくしたいと思います~

おとぎ話(笑)15 [名作パロディー]

<かさじぞう>

「ただいま。笠は売れなかったが、峠の地蔵さんにかぶせてあげたよ」
「あら、いいことをしましたね。…ん?峠の地蔵?おじいさん、まさか峠のあの女の家に?」
「はっ、しまった!」
「この浮気者!!」


<鶴の恩返し>

「おじいさん、だめですよ。決して覗かないと約束したじゃありませんか」
「ちょっと、クリスマスプレゼントを渡すだけだよ。だって今日はイブだし」
おじいさんは、そうっとふすまを開けた。
「あら、鶴」
「おじいさん、おばあさん、決して覗くなと言ったのに、とうとう見てしまいましたね。そうです。私はあの日助けてもらった鶴です」
「うん、わしゃ、知っとたよ。だからプレゼントはミミズだ」
「美味そう~。あ、ばあさん、倒れた」

<白雪姫>

「ハイホー、ハイホー。あれ、家が変わってる」
「おかえりなさい。今日はクリスマスだから、小人さんたちのお家をデコレーションして、お菓子の家にしてみたの」
「すごいぞ、白雪姫」
「やるじゃん」
「あ、道に迷った子供が二人、こっちに向かって歩いてくるぞ」

「見てごらん、グレーテル、お菓子の家だよ」
「本当だわ、ヘンゼル兄さん」
…いや、違う話になってるし。


<赤ずきん>

「赤ずきんちゃん、おばあさんのところにクリスマスケーキを届けておくれ」
「赤ずきんちゃん、3丁目の田中さんにピザを配達しておくれ」
「赤ずきんちゃん、街頭で居酒屋のティッシュを配っておくれ」
「赤ずきんちゃん、子供会のイベントに出ておくれ」
「赤ずきんちゃん、よい子にプレゼントを配っておくれ」

「あたし、サンタじゃないもん。この衣装、サンタの衣装じゃないもん!」


<マッチ売りの少女>

「マッチはいりませんか。マッチはいりませんか」
あ、あそこの見えるのは、中国人観光客。
「マッチ爆買いしませんか。マッチ爆買いしませんか」

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サンタが村にやってくる [コメディー]

村民のみなさん、おはようございます。
12月24日。天気は晴れです。
今日は、クリスマスイブです。サンタクロースがこの村にもやってきます。
去年は、不審者だと駐在所に通報した人が3人いました。
サンタは不審者ではありません。
サンタをつかまえてやると、寝ないで待っていた子供が6人いました。
良い子で早く寝ないと、サンタは来ませんよ。
では、次のお知らせです。
村の小学校で飼っていたブタが、子供を産みました……

村民のみなさん、こんにちは。
お昼の時間に失礼します。
サンタクロースは、順調にこちらに向かっていると、情報がありました。
空を飛んでくるので、UFOと勘違いした人が、去年は2人いました。
サンタは宇宙人ではありません。
動画を撮ってテレビ局に送ろうなどという不届き物は、この村にはいないと思いますが、絶対にやめてくださいね。
けがれない心で、おごそかにサンタクロースを待ちましょう。
では次のお知らせです。
新春サルマネ大会に出場する方は、農協まで……。

村民のみなさん。
午後5時をお知らせします。お仕事お疲れさまでした。
夜、耳を澄ませてみてください。
サンタクロースの鈴の音が聞こえてきますよ。
除夜の鐘ではありませんので、いくら数えても煩悩は消えません。
子供部屋の窓のカギは開けておいてください。
閉まっていたらサンタが入れませんから。
それから、お願いしたものとプレゼントが違っていても、返品交換は一切受け付けませんので、ご了承ください。
では次のお知らせです。
村いちばんの長寿である徳兵衛さんに、2人目の玄孫が生まれました……。

「村長、村内アナウンスも滞りなく終わりました」
「そうか。では、そろそろ行くか」
村長は、村長の着ぐるみを脱いでサンタクロースになった。
秘書は、秘書の着ぐるみを脱いでトナカイになった。
「やれやれ、来年はもう少し都会に派遣されたいな」
「あら、村のクリスマスも静かでいいものですよ」
サンタクロースとプレゼントを乗せたそりが、ゆっくり空へ舞い上がった。

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雪女の温もり [ファンタジー]

ようやく本格的な冬が来ました。夏は大の苦手です。
だって私、雪女ですもの。

人間の男に恋をして、一緒に暮らして10年が過ぎました。
ひとり娘の深雪が生まれて、この暮らしにもすっかり慣れました。
夫はスキー客相手の民宿を営んでいます。
だけどこのところ、客が減って商売がうまくいっていません。
「なあ、スキー客もめっきり減ったし、民宿をたたんで町に行かないか?」
夫が言いました。
「嫌ですよ。町でなんか暮らせません」
「しかし深雪も来年小学生だ。こんな山奥では不便だよ」
たしかに深雪は、物を凍らせる力もないし、暖炉の前に座っても平気です。
完全な人間なのです。
きちんと学校へ行かせなければいけません。

私たちは、春になる前に町へ引っ越しました。
夫は近くのレストランで働くことになり、私は深雪の学校の準備に追われました。
町の暮らしは、戸惑うことばかりでした。
建物の中はどこも暖房が効いて暑すぎます。
車が多くて怖くて歩けません。
何より苦手なのは、近所づきあいです。
暖房の効いたファミレスに集まって、意味のない話を延々と続けるのです。
具合が悪くなりそうでした。
一生懸命働いてくれる夫と、小学校を楽しみにしている深雪に、元の暮らしに戻りたいとは言えませんでした。
私はかなり、無理をしていたのです。

3月の声を聞くころに、私はとうとう倒れました。
せっかく深雪のランドセルが届いたというのに。
暖房のない寒い部屋で安静にしていましたが、一向によくなりません。
「一度山へ帰ったらどうだ?」
夫が言いました。
「いいえ。山へ帰ったら私、元の雪女に戻ってしまいます。二度とここに戻ってくることは出来ません」
そうなのです。私は母の反対を押し切って、人間と結婚したのです。
母を捨てたのです。
だから山へ帰るということは、夫と子供を捨てるということなのです。

私は弱っていきました。
「ママ、大丈夫?」
深雪が、可愛い手で雪だるまをおでこに乗せてくれました。
仕事が忙しいのか、夫は深夜まで帰ってきません。
こんな冷たい体では、深雪を抱きしめることも出来ません。
寂しい思いをさせてごめんねと、隣の部屋で眠る深雪に詫びました。

翌日、雪が降りました。3月にしては珍しい大雪です。
体が少し、楽になりました。
「外へ出てごらんよ」
夫に言われて、重い体で表に出ました。
懐かしい雪の匂いです。町にも雪は降りますが、匂いが全然違うのです。

突然視界を奪うほどの吹雪になりました。
ゴーッと襲いかかるような吹雪の中に、母の声を聞きました。
「そんなになってまで、人間と暮らしたいのか」
「お母さん?」
吹雪の中から、母が現れました。
「馬鹿な娘だね。あんたは」
「お母さん、どうして?」
「あの男が訪ねてきたのさ。人間のくせにあんな山奥までひとりで来たのさ。病気のあんたを助けてほしいってさ」
夫が深夜まで帰らなかったのは、そういうことだったのです。

「さあ、ここに残るかい?それともあたしと一緒に山へ帰るかい?」
私は迷わず答えました。
「ここに残ります」
「また病気になるよ」
「かまいません」
母は、あきれたような顔で、ふんと鼻を鳴らしました。
「じゃあ、病気になったらまた雪を降らしてやるよ。春でも夏でもね」
やれやれとため息をつきながら母が消えると、雪もぴたりと止みました。
キラキラ光る雪の中に、深雪を抱いた夫が立っていました。
「帰らなくてよかったの?」
「いやだわ。ここが私の家よ」

そっと夫に寄り添いました。
少しずつ、夫の体温が移ってきました。
心地よい温もりに、私はそっと目を閉じました。きっと、もう大丈夫。

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忠臣蔵2015 [コメディー]

私は吉良上野介である。
そう。元禄15年12月14日に、赤穂浪士の討ち入りで死んだ吉良上野介…の生まれ変わり。
あれから生まれ変わる度に探している。大石内蔵助の生まれ変わりを。

だって、悔しいではないか。仇討ちなんて言われて美談にされて。
悔しくて仕返ししなければ気が済まない。
だから、何度生まれ変わっても吉良だったときの記憶が消えない。
早く大石の生まれ変わりを探して仕返ししなければ、せっかくの現世を楽しめない。

今の時代はとても便利だ。インターネットという優れものがある。
SNSを使って大石を探し出すことができるかもしれない。
今回は、なかなか可愛い娘に生まれたから、これを武器に大石を誘い出そう。
狙っているのは、ハンドルネーム『くらのすけ』
こいつが、大石の生まれ変わりではないか。
予感がするのだ。今回は、必ず出会える。
交流を持ち、いよいよ実行に移す。

『くらのすけさん、12月14日に会いませんか?…キラ』
さっそく返信が来た。
『いいよ。キラちゃんに会えるの楽しみ』

12月14日、くらのすけが待ち合わせ場所にやってきた。
チャラチャラした男だ。大石もこんな男に生まれ変わるとは嘆かわしい。
「もしかしてキラちゃん?うわ、めっちゃ可愛い」
「大石内蔵助か?」
「違うけど、誰それ?ネット上の名前は『くらのすけ』だけどさ、これ、ペットの名前からもらったの。それでさ、今日どうする?よかったらうちに来ない?すぐ近くなんだ。何もしないからさ」
殺されるとも知らずに呑気な奴だ。
私が吉良邸で殺されたように、おまえも大石邸で殺してやる。

大石の家は、なかなか大きな家だった。
「ここにひとりで住んでいるのか?」
「嫁さんと子供がいたけど離婚しちゃってさ」
「奥方の名はりくか?息子はちからか?」
「いや、全然違うけど。キラちゃん、さっきからちょいちょい面白いね」
「ところでくらのすけ、今日は何の日かわかるか?」
「え?クイズ?えーっと、クリスマスイヴの10日前?」
「ちがう、討ち入りの日だ」
「討ち入り?ああ、たしか、アコーローシーの?」
「赤穂浪士だ。中華料理みたいに言うな」
「それで、その討ち入りがどうかしたの?」
「おまえは本当に大石の生まれ変わりではないのか?」
「ごめんキラちゃん。おれ歴史苦手なの。たしか、チューシングラだっけ?」
「チューインガムみたいに言うな」
ああ、こいつは本当に大石ではなさそうだ。
歴史も知らないバカな男に、大石が生まれ変わるはずがない。予感が外れた。
もうこいつに用はない。帰ろう。

「あれ、帰るの?来たばっかりじゃん」
「もうおまえに用はない」
ワンワンワンワン!!!
「な、なんだ」
「うちの犬だよ。めったに吠えないのにおかしいな」
ワンワンワンワン!!!

なんだろう。この犬の目には見覚えがあるぞ。
ワンワンワンワン!!!

「こら、くらのすけ、静かにしろ」
「くらのすけ?」
「うん。犬の名前」
大石、おまえか…
犬がこくりと頷いた。
か…かわいい。

********************
◇お知らせ◇

このブログのお話が、韓国の出版社が配信している日本語教材に使っていただけることになりました。
12月から、毎週水曜日にネット配信されることになりました。

最初の配信は『偵察』という話しです。ひとつの話を何回かに分けて配信します。
韓国語では『정찰』と書くみたいです。

韓国語のサイトですが、よかったら覗いてみてください。
今、第1回第2回が配信されています。
ハングル語わかる人がいたら、嬉しいな。

ブログも地道に続けていると、こういうご褒美があるんですね。
お話をいただいたときはビックリしました。
日本語の勉強のお役に立てるなんて、光栄ですね^^


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12月のラプソディ [コメディー]

クリスマスの予定ですか?
ふつうにバイトですけど。カップルだらけの居酒屋で。
ケンカ売ってます?
いやね、あたしもこんなはずじゃなかったんですよ。
たしかに田舎の女子高時代は、イケてないグループに所属してましたよ。
だけどね、東京の女子大生になって変わったんですよ。
髪染めて、課題そっちのけでギャルメイクの練習して、どこから見ても渋谷のギャルでしょ。
合コンも行ったし、すぐに彼氏が出来る予定だったんですよ。
それなのに、もう東京に来て3度目の12月ですよ。
彼氏いない歴21年ですよ。
居酒屋ではいつのまにかバイトリーダーですよ。シフト管理もお手の物ですよ。

あっ、おねえさん、これってテレビですよね。
何チャンネルですか? あっ、田舎じゃチャンネル違うんだ。
放送いつですか?
パパとママとじいちゃんとばあちゃんに教えなきゃ。

街頭インタビューの放送は、残念ながら地方には流れなかった。
だけど、上京している同級生のサトシから久しぶりに連絡が来た。
「テレビ見たよ。沢田、髪染めすぎじゃね。傷んでる毛先切ってやろうか?カットモデル探してたんだよ」
サトシはカリスマ美容師を目指して修行中。
カットモデルってことは無料だよね。もちろんOKした。

閉店後の美容室。サトシはいつも遅くまで練習しているらしい。
「沢田、なんか眠そうじゃね」
「うん。昨日遅くまでバイトだったから」
「寝ていいよ。適当に切っておくから」
お言葉に甘えて、あたしは眠った。だって本当に眠かったんだもん。
もうぐっすり。
素敵な王子様にお姫様抱っこされる夢まで見た。
肩をゆすられて目が覚めるまで、あたしは夢の中にいた。

目が覚めてぼーっとした頭で目の前の鏡を見た。
「えっ???」
一気に目が覚めた。
鏡の中には、ベリーショートのあたし。しかも黒髪。
何これ?まるで中学生だ。
「ちょ、ちょっと。何よ、これ」
「ごめん。ちょっと切りすぎたかも」
「ちょっとじゃないだろ。しかもなんで黒髪になってるの?」
「あ、ヘアカラーはサービスね。シャンプー台まで運ぶの大変だったよ」
は? お姫様抱っこ。おまえだったのか!

「おまえなんか、カリスマになれるもんか。このカス、ボケ」
悪態をついて店を出た。
夜風が冷たい。首筋が死ぬほど寒い。風邪ひいたらサトシのせいだ。

折しも翌日はクリスマスイブ。
この髪ではギャルメイクも似合わない。もうどうでもいいや。
すっぴんでバイトに行った。
「え?沢田さん?うそ、すげー可愛い」
店長はじめバイト仲間が、なぜか大絶賛。
男性グループの客からも、まさかの「アドレス教えて」攻撃。
男があたしに見惚れて険悪になるカップルまで。モテ期到来?
あれ?もしかしたらあたし、今日中に彼氏出来るかも。

いつになくモテまくった日付が変わるころ、サトシがひとりで店に来た。
チャラ男のくせに、クリスマスに一緒に過ごす彼女もいないのか。
「どう。その髪評判いいだろう」
「うん。びっくりだよ。あんたやっぱりカリスマ予備軍だわ」
「前からずっと思ってたんだ。沢田は絶対ショートが似合うって」
前からずっと? ずっとあたしを見ていたってこと?
「ところで沢田、バイトのあと予定ある?」
「あるわけないじゃん」
「じゃあ、俺と一緒に過ごさねえ?」
わお、まさかの急展開。どうしようかな。やっとモテ期が到来したのに、手近なところで手を打っていいものか。
でもまあ、サトシと付き合えば美容室代がうくかな。
そんなよこしまな気持ちがありつつも、とりあえずOK。
パパ、ママ、じいちゃん、ばあちゃん、あたし、初めてカレシが出来ました~。
メリークリスマス~

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