So-net無料ブログ作成
検索選択

家庭訪問です! [コメディー]

1.過保護はいけません!

「先生、うちの子、男の子なのにおとなしすぎませんか」
「心配いりませんよ。授業中もちゃんと手を上げるし、友達もいるようです」
「そうですか。でも先生、最近いろんな事件があるから、私心配で。毎日学校までついていきたくなっちゃうんです」
「お母さん、お気持ちはわかりますが、過保護すぎてもいけません。少しは子離れしないと」
「そうですね。ところで先生、あちらの方はどなたです?」
「ああ、僕の母です。僕がちゃんと家庭訪問できるかどうか心配で、ついてきたんです」
「子離れしろよ!」


2.うすいんです!

うすい先生、いつも娘がお世話になっています。
あっ、お茶どうぞ。ちょっとうすいかしら。
うすい先生、うちの娘、最近化粧を覚えて困ってますの。
もちろん、うすい化粧ですけどね。
毛抜きで眉毛も抜いているんですよ。あの子の眉毛、うすいでしょう?
もっと勉強にハゲんでほしいんです。
気性もハゲしくて、すぐキレるんです。本当に毛が…いや、気が抜けません。
本当に頭がうす…いや、痛いですわ。
あら、やっぱりお茶うすいわね。ごめんなさい、うすい先生、淹れなおします。
やだ、お茶碗の模様がハゲてるわ。
お客様用なのに、本当に失礼しました、うすい先生。

「あの、お母さん、僕の名前は、臼井(うすい)ではなくて、白井(しらい)です」
「まあ、うすいだけじゃなく、白髪も?」
「お母さん!!」


3.迷いました!

「先生!」
「ああ、タカシ君のお母さん、迎えに来てくれたんですか?」
「先生があまりにも遅いから心配で」
「すみません。すっかり迷ってしまって」
「道、わかりづらかったですか?」
「いや、迷ったのは道じゃないんです」
「え?じゃあ何を迷ったんです?」
「迷いに迷って、ようやく決心しました」
「何を?」
「タカシ君のお母さん、結婚してください」
「ムリ!」
「少しは迷ってよ~」

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

霊感教室 [ホラー]

わたし、気づいちゃった。
この教室には、幽霊がいる。

高校に入学して2日目、クラスの集合写真を撮った時だ。
どう数えても、名簿の数と生徒の数が合わない。
生徒の方が、ひとり多い。

教室に戻って生徒の数を数えても、やっぱりひとり多い。
クラスメイト達の顔を見回す。
いくつかのグループが出来て、はじける笑顔に包まれた教室。
その中で、少女がひとり、誰にも染まらずぼんやり立っている。
青白い顔に長い髪。
窓側に立っているせいか、なんとなく輪郭もぼやけて見える。
わたしと目が合うと、驚いて目を見開いた。
『あなた、私が見えるの?』と言っているような目だ。
もしかして、この少女が幽霊…?
確かめたい。わたしはゆっくり少女に近づいた。

「ねえ、あなたも霊が見えるの?」
突然後ろから声をかけられた。
藤木というネームを付けているポニーテールの女の子だ。
「実は…私も見えてるの」
藤木さんは怯えた声で言った。わたしは頷いた。
「藤木さん、あなたも見えるのね」
やっぱりそうなのね。彼女は、幽霊。

大きな音で扉が開いて、先生が入ってきた。
おしゃべりをしていた生徒たちがいっせいに席に着いた。
わたしも座ろうと思ったら、席がない。
あの黒髪の少女が、わたしの席に座っている。
やだ、こわい。
先生がわたしを見ている。早く座れって言いたそう。
すみません。だけど、座りたくても座れないんです。

そのとき、藤木さんが私の代わりに手を上げてくれた。
「先生、この教室の中に霊がいます」
ざわざわと教室内が揺れた。「何言ってんの?」「頭大丈夫?」
失笑が起こるのも気にせずに、藤木さんは話し続けた。
「私、霊が見えるんです。悪い霊ではないと思うけど、さっきから震えが止まらないんです」
黒髪の少女が戸惑っているのがわかる。
そうよ、あなたの居場所は、ここではないのよ。

黒髪の少女が立ち上がる。ああ、よかった。やっと座れる。
だけど彼女は、ささやくような声で言った。
「先生、わたしにも見えます。さっきまで、わたしと藤木さんの間にいました」
生徒たちが、小さく悲鳴を上げた。
え? なに、なに? 幽霊はあの少女じゃないの?

「じつはみんなに、話しておくことがある」
先生がゆっくり話し始めた。
「君たちと一緒に高校生になるはずだった女生徒が、もう一人いたんだ。しかしその生徒は、入学前に事故で亡くなってしまった」
ざわめく教室。泣き出した女の子もいる。
「きっと、死んだことに気づかずに、この教室に来てしまったのかもしれないね」
先生が、わたしに向かって手を合わせた。
「じつは、先生にも見えるんだ。ショートカットの女生徒の霊が」

藤木さんと黒髪の少女が振り向いてわたしを見た。
手を合わせて合唱。
他の生徒たちも手を合わせて、みんなで合唱。
え…? ショートカットの幽霊って…わたし?
ここに居ちゃいけないのは、わたしだったのね。

ピカピカの制服。
きっと、最期にパパとママが着せてくれたのね。
だからわたし、勘違いしちゃった。

バイバイ、ありがとう。
優しい光に包まれて、わたしはゆっくり天に昇った。

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

おとぎ話(笑)16 [名作パロディー]

<赤ずきん>

「おばあさまの目は、どうしてそんなに大きいの?」
「整形したからさ」
「マジか!」

<笠地蔵>

「おじいさん、お地蔵さんが、お地蔵さんが!」
「何だ、何だ、笠の礼でも持ってきたか?」
「笠を返しに来ました。受け取りにサインしてほしいって」
「それだけ…?」


<人魚姫>

私は人魚姫。
足をもらったばかりだから、上手く歩くことができないの。
あら? 上手く歩けない人がたくさんいるわ。
もしかして、あの人たちも人魚かしら?

「砂浜が熱いんだよ!」


<金の斧・銀の斧>

「おまえが落としたのは、金の斧か?銀の斧か?それとも、「山形県〇〇村字〇〇 鈴木与作」と書かれた鉄の斧か?」
「あっ、その鉄の斧っす。母ちゃんが、自分の持ち物には名前書けって言うんで」
「そうか。正直でよろしい。ご褒美に、油性のマジックをあげよう」
「なんで油性マジック? あっ、名前消えてる」


<金太郎>

金太郎のところに熊がやってきました。
「金太郎さん、すもうとろうよ」
「いいよ」
いつもは金太郎を応援する人々が、今回は熊を応援しています。
「がんばれ!くまモン」
「負けるな!くまモン」
「ファイト!くまモン」

熊本地震で被害に遭われたみなさまに、
心よりお見舞い申し上げます。

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

交換しましょ [公募]

今、クラスでは『名刺交換ごっこ』が流行っている。
生徒がそれぞれ作った名刺を交換していく遊びだ。
「ワタクシ、こういうものです」
「これはこれは、ごていねいに」
そんな無邪気なやりとりを見ていると、教師になって本当によかったと思う。
教師2年目で初めての担任。クラスの子供たちはみんな素直で可愛い。

「先生の名刺はないの?」
休み時間に生徒たちに囲まれた。
「先生の名刺欲しいな」
みんなにせがまれて、夜なべをして名刺を作った。
パソコンは使わず、一枚一枚手書きした。
ピンクの厚紙を切って、紫のペンで名前を書く。
『二年二組たんにん たかなし ゆみ』
女の子が好きそうなキラキラペンで飾りを付けて、シルバーのデコペンで「ヨロシク」と書き、赤いハートのシールをちりばめた。
30人の生徒の顔を浮かべながら書いた。

翌日、朝の連絡事項を終えてから、生徒全員に名刺を配った。
「わあ、可愛い」「すげえ」と大好評だった。

職員室に行くと、隣のクラスの桜庭先生に叱られた。いつものことだ。
「高梨先生、ホームルームで何騒いでるの? 私のクラスは読書タイムなのよ。うるさくて集中できないわ。だいたいその服装と髪型は何? ちょっと派手じゃないかしら。いつまでも学生気分じゃ困るのよ」
いつもの小言。もう聞き飽きた。
悪いけど、桜庭先生より私の方が生徒に人気がある。

そんな自信が揺らぐ出来事が、翌日起きた。
桜庭先生がいつにも増して怒っている。
「高梨先生、私の花壇を荒らしたわね。ちょっと叱ったくらいで何するのよ」
「知りませんよ。花壇なんて荒らしてません」
「じゃあこれは何? 花壇の端に落ちてたわ」
桜庭先生が目の前にかざしたのは、私が作って生徒に配った名刺だった。
どういうことだろう。まさかうちのクラスの生徒が……。

それだけではなかった。他の先生たちからも苦情が殺到した。
「高梨先生、給湯室で茶碗割ったでしょう」
「知りません」
「だってあなたの名刺が落ちていたのよ」
「理科室の標本を倒したのは君か?」
「音楽室のピアノのふたを開けっぱなしにしたわね、高梨先生」
そんな調子で、私は朝から叱られ続けた。何の覚えもない。
まさか生徒たちが悪戯して、それを私のせいにした? どうして?

帰りのホームルームで、私は生徒たちに語りかけた。
「みんな、昨日先生があげた名刺持ってる?」
しーんとしている。全員が下を向いた。
「この中に、桜庭先生の花壇を荒らしたり、お茶碗を割ったり、理科室の標本を倒したり、ピアノを使ってふたを閉めなかった人はいませんか? 正直に言えば先生は怒りません」
誰も手を上げない。ただ下を向いているだけだ。
まさか全員で私を陥れようとした? 
好かれていると思ったのは、大きな勘違いだったのだろうか。心が折れそうだ。

その時、数人の女生徒がしくしく泣きだした。
つられたのか、生徒全員が泣き出した。
「ちょっと、泣いてもダメよ。悪戯をしたのは誰なの? クラス全員なの?」
「先生、私たち、悪戯なんかしてません」
クラスでリーダー格の女生徒が手を上げた。
「私たちは、先生の名刺を捨てただけです」
「え? 捨てた? どうして?」
「先生の名刺、キラキラしてて派手だったから、ママが見たらきっとまた悪口を言うから」
「悪口?」
「高梨先生の服はいつも派手だって」
「うちのママも言ってる。化粧が濃くてキャバ嬢みたいって」
「キャバ嬢?」
「ひらひらしたスカートで、チャラチャラしてるって。教師の自覚がないって」
出てくる、出てくる、私の悪口。
「だから、親に見つからないように、みんなで捨てました。先生ごめんなさい」

ああ、この子たちなりに、私を守ろうとしてくれた。
私より、ずっと大人だ。私は、生徒と一緒になってボロボロ泣いた。

夕暮れの職員室、桜庭先生の机の引き出しをこっそり開けると、やっぱりあった。
束になった私の名刺。私の人気をねたんだ桜庭先生の仕業だったのだ。
また何をされるかわからないから、名刺は返してもらった。

桜庭先生が連絡帳を抱えて戻ってきた。私は微笑んで、名刺を一枚差し出した。
「桜庭先生、名刺交換しましょ」
慌てて引き出しを確認する桜庭先生。教師にふさわしくないのはあなたの方よ。
だけど明日から、もう少し地味にしようと思う。
私の可愛い生徒たちのために。


*******
公募ガイド TO-BE小説工房で、久々の佳作をいただきました。
テーマは『名刺』
主人公を、あえてサラリーマンにしませんでした。
それがよかったのかどうかは…よくわかりません。
今月のテーマは『風鈴』です。そろそろ書かなきゃ^^

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

授賞式に行ってきました

ゆきのまち幻想文学賞で、初めて入選しました。
授賞式は青森なので、遠くて少し迷いましたが、こんな機会はめったにない。
ということで、週末1泊2日で行ってきました。

東京駅で、一緒に受賞した方と待ち合わせて一緒に行きました。
慎青森でもう一人の受賞者の方と合流し、3人でホテルに向かいました。
会場は、八甲田ホテル。素敵なホテルです。宿泊もしました。
4月に雪景色が見られるなんて、すでに感動。

1460266666489.jpg
(雪は例年より少ないそうですよ)

さて、表彰式です。
長く審査員をしてくださった高田先生が亡くなり、先生を偲びながら式は進んでいきました。
受賞者は常連が多く、目を潤ませる方も多くいました。
すごく慕われた優しい先生だったのですね。お会いしてみたかったですね。

その後は素敵な雰囲気の朗読会。
尺八やピアノやバイオリンの演奏もあり、うっとりしました。

そしてパーティ!!!
豪華な食事とアットホームな雰囲気です。
ここでお花をいただきました。

1460379283184.jpg
写真忘れて家で撮ったので、変な写真です。スンマセン
もっと豪華な素敵な花束でした。

元タカラジェンヌの素晴らしいステージもありました。
1460266740106.jpg

2次会、3次会、たくさんの方とお話しできました。
審査員の乳井先生からも、作品の感想をいただきました。
そして、何よりうれしかったのは、萩尾望都先生にお会いできたこと。
少女漫画大好きな私は、中学の頃から萩尾先生の漫画を読んでいました。
神様みたいな方です。
萩尾先生はとても優しくて、写真も気軽に撮ってくださいました。
そして私の作品を「面白かった」と言ってくださいました。
もう感激です。

すべてが夢のような時間でした。
楽しかった。
ぜったいまた来たい!と思いました。
出来れば今度はもっと上の賞で。

今回、一緒に行ってくれたMさん、いろいろ教えてくれたKさん、そして楽しい時間をくださったすべての方に感謝です。
きっと、また会いましょう。

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

弟の彼女 [男と女ストーリー]

弟の彼女は可愛い。
色が白くてぽっちゃりしていて、性格もすごくいい。
会社の帰り、街でばったり彼女と出会った。
彼女はひとりだったから、ちょっと誘ってみた。
いとも簡単に、彼女はついてきた。
弟に後ろめたい気持ちはあったが、僕は彼女と楽しい時を過ごした。

彼女の職場が、僕の会社から近いことを知り、たまに待ち伏せて逢瀬を重ねた。
彼女はいつも断らなかった。

彼女は弟を愛している。
それなのになぜ、僕の誘いに応じるのか。
答えは簡単。僕が弟そっくりだからだ。
僕たち兄弟は双子だ。親も見分けがつかないほど似ている。
彼女は、僕を弟だと思っているのだ。
だから僕を、弟の名前で呼ぶ。

弟と彼女の結婚が決まった。
僕の秘密の恋も、もう終わろう。
弟のふりをして彼女に会うのは、もうやめよう。
弟と彼女の幸せを、僕は心から望んでいる。


私、道ならぬ恋をしているの。
相手は、姉の恋人。
初めて紹介されたときから、ずっと気になっていたの。
その彼が、突然私を誘ってきた。
姉の顔がちらついたけど、自分の気持ちを抑えられなかった。

それからたまに、彼と会っている。
彼に優しくされるたび、罪悪感でいっぱいになるの。
彼が愛しているのは姉だ。
そう、彼は私を姉だと思っている。

私たち姉妹は、親も見分けがつかないほどそっくりな双子なの。
彼が私の名前を呼ぶことはない。
それでもいいと思っていたけれど……。
姉と彼の結婚が決まった。
だからもう終わり。
姉のふりをして彼と会うのは、もう終わりにするわ。


結婚式当日、新郎の兄は、新婦が双子の姉妹であることを知る。
結婚式当日、新婦の妹は、新郎が双子の兄弟であることを知る。

「君、もしかして」
「あなた、もしかして」
見つめ合うふたりに、恋の女神は微笑むだろうか。
まずは、自己紹介から始めてみよう。

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

春爛漫、さくらデート [男と女ストーリー]

15時過ぎに駅に着いた。
たった1年離れただけなのに、少しだけよそ者になったような気がする。
研修を兼ねた大阪勤務が終わった。
なかなか過酷な1年だった。
この研修で、辞めてしまう社員もいるらしい。
慣れるまでの3か月が特につらかった。
7月の、あの七夕の日にリカが逢いに来てくれて、どれだけ救われたかわからない。

いつも僕を呼びつけることを日課にしていたリカが、大阪まで逢いに来るなんて。
驚いたと同時に、僕は少し欲張りになった。
リカが駅まで迎えに来ていることを期待した。
大阪まで来たんだから、歩いて10分の駅まで来てもいいんじゃないか…と。
だけどリカはいなかった。
忘れているのかな。電話してみよう。駅まで飛んでくるかもしれない。

「もしもし、リカ?」
「テツオ? なんやねん。どないしたん」
「いや、もう関西弁はいいんだ。帰ってきたから」
「ふうん、そうなの? 今どこ?」
「駅」
「じゃあ早く帰ってきなさいよ」
「迎えに来ないの?」
「行かないわよ。あたしは今、ハーブティーに合うお菓子の研究で忙しいの」
うそばっかり。ハーブティーなんて好きじゃないくせに。
まあ、想定内の反応だ。他の手段を考えよう。

「駅前の桜並木がすごくきれいだよ」
「ホント?」
「満開だよ。この桜を見ないなんて、一生の損だ」
「行く。すぐに行くから待ってなさいよ」
ほらね。リカは桜に弱いんだ。

10分後にリカが来た。
桜色のワンピースに緑のスカーフを巻いている。
さくら餅みたいだ。怒られるから言わないけど。
「ただいま」
「どうしてお正月に帰ってこなかったのよ」
「忙しくて。年賀状送っただろ?」
「知らないわ。ヤギに食べられちゃったもん」
「ふーん、ヤギ飼ってるんだ。名前は?」
「…テツオ」
リカがくるりと背を向けた。

桜並木を並んで歩いた。少し不機嫌な横顔。
本当は満開じゃない。5分咲きといったところだ。
もしかして、それを怒っているのかな。
「あのさ、よく見たら満開じゃなかった。ごめん」
「知ってたわよ。満開じゃないことくらい」
「そうなの?」
「朝から3度も駅に来たら、いやでもわかるわ」
「3度も駅に?どうして?」
「テツオが時間を言わないからでしょう」
「あっ、そうだっけ」
やっぱり迎えに来ていた。リカは、本当はすごく優しいんだ。
そっと手を握ったら、リカの頬がピンクに染まった。
「ますますさくら餅みたい」
あ、いけない。つい声に出してしまった。
「なに?」
「あ、いや、さくら餅が合うんじゃないかな。ほら、ハーブティーに」
「何言ってるの? さくら餅には緑茶よ」
「買って帰る?」
「じゃあ、草餅も買いなさいよ」
「了解」

リカがやっと笑った。
やっぱりリカの機嫌を直すのは食べ物だな。
「満開の桜もテツオと見たいわ」
ふいにリカが言う。言った後であわてて、
「ヤギのテツオよ」と口をとがらせた。
こういう会話が、僕の人生に不可欠だということに、今さら気づく。
リカにとってもそうならいいのに。
とりあえず僕たちの恋は、まだ3分咲き程度かな。

DSCF0155.JPG

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村