So-net無料ブログ作成
検索選択

桜より〇〇 [コメディー]

桜が満開になったから、今日の合コンはお花見合コンだって。
はっきり言って夜桜なんて寒いだけ。
冷え性なのよ、わたし。
でもね、今回の合コンはレベルが高いらしいの。
IT企業のエリートだって。
桜はどうでもいいけど、とりあえず合コンには参加するわ。

あー、始まって30分で、来たことを後悔した。
寒いのよ。襟がいい感じに開いたブラウスなんか着てきちゃったから。
ダウンジャケットでも着てくればよかった。
おまけにコンタクトの調子が悪くて外しちゃったから、よく見えない。
それに、この暗さでしょう。
ライトアップされているとはいえ、エリートさんたちの顔がよくわからない。

そんなとき、隣に座った男性が、小声でささやいた。
「寒いんじゃない? ふたりで抜けて暖かいところで飲み直さない?」
そのときわたし、とても尿意を感じていたの。
簡易トイレの行列に並ぶかどうか悩んでいたところ。
行列に並んでトイレに入るのが、わたしはとても嫌いなの。
わたしのあとに待っている人がたくさんいると思ったら、落ち着けないじゃない。
空いている男子トイレに堂々と入れるオバサンに、出来ることならなりたいわ。

花見よりも男よりも、今すぐトイレに行きたいの。
だからわたしは、彼の申し出をお受けしたわ。
さりげなく立ち上がって、ふたりで輪を抜けた。
そこから一番近い居酒屋に入って、席に着くなりトイレに直行。
居酒屋のトイレが、オアシスみたいに感じたわ。
手を洗って、髪を整えて、ちょっと化粧を直して、いい感じに胸元を開けてから席に戻った。
IT企業のエリートの顔を、じっくり見てやろうじゃないの。

ところが…席に彼がいない。
行き違いでトイレに行ったのかしら?
それにしても上着もない。
「あの、この席にいた男性はどこへ行ったかしら?」
茶髪の店員に尋ねてみた。

「ああ、帰りましたよ。なんか~、明るいところで見たら~、好みじゃなかったっぽくて」
好みじゃなかった…っぽい? わたしのこと?
「お飲み物どうしますか?」
「焼酎ロックで」

桜より、男より、今夜のわたしはトイレを必要としていた。
それだけのことよ。

「焼酎おかわり」
「早え!(店員)」


にほんブログ村