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彦星の愛人 [コメディー]

あら、織姫さん、いらっしゃい。
今日は7月7日。年に一度の面会の日ですね。
今、彦星さんを呼んできますね。
え? 私ですか? 私は彦星さんの愛人です。

でもご安心くださいね。
本妻は織姫さんだということは、重々承知していますから。
私は愛人の身ですから、364日一緒にいられるだけで充分ですのよ。
呼んでくるからお待ちくださいね。
彦星さーん。織姫さんが見えたわよ。
早くして。待たせちゃ悪いわよ。

ほらほら、子供の面倒は私が見るから。
子供いるんですか…って? はい。今3ケ月です。
あっ、ご安心ください。
認知はしてもらいましたけど、本妻の座を奪う気はさらさらありませんので。
名前聞きたいですか? 別にいい? そう言わずに聞いてくださいよ。
星羅月って書いて、セーラームーンっていう名前なんです。
変でしょ。キラキラネーム。彦星さんがつけたんです。

もう、早くしなさいよ。
星羅月、パパはお出かけだからママのところにいらっしゃい。
ほら、待たせたら織姫さんに失礼よ。
1年に一度しか逢えないんだから。

あれ? 織姫さん? いない。
帰っちゃったのかしら。どうして?
もう、1年に一度くらい出かけて欲しかったのに!


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ビールを買いに [コメディー]

夏の夕方、ずいぶん早く帰ってきたお父さんが、冷蔵庫を開けて「ああああ~」と大声を出した。
「ビールがない!」
お父さんは息子の啓太を呼んだ。
「啓太、角のコンビニでビールを買ってきてくれ。お父さん、疲れて歩けない」
「お父さん、僕は12歳だよ。未成年はビールを買っちゃいけないんだ。大人のくせに知らないの?」
「でもさ、おまえは12歳の割に背が高い。俺と大して変わらないだろう。変装すれば買えるさ」
犯罪じゃん、と啓太は思ったけれど、ちょっと面白そうな気もした。
お父さんのスーツを着て、帽子とサングラスとマスクをしたら小学生には見えない。
「おお、完璧だ。低い声を出すんだぞ」
「じゃあ、ちょっと行ってみる」
「角のコンビニだぞ。間違えるなよ」

外に出るなり啓太は、あまりの暑さに驚いた。
「お父さん、こんな暑いスーツで会社に行ってるんだ。大変だな」
啓太はすぐさま上着を脱いだ。
コンビニに着くと、ガラスに映った自分の姿を見てギョッとした。
「あれれ、まるでコンビニ強盗だ」慌ててサングラスを外した。
店内には、レジの女と男のバイト。立ち読みの高校生がふたりだけ。 
帽子を目深に被りコンビニに入ると、啓太は迷わずお父さんの好きなビールを2本かごに入れた。ついでにポテトチップを入れてレジに行った。
「いらっしゃいま……」
レジの女の手が止まった。啓太の顔をじっと見ている。
隣にいた大学生のバイトが「未成年っすよね」とささやいた。

レジの女は呆れたような顔で、バイトに言った。
「このビール、あたしが買うから、レジ代わって」
「え? いいんすか?」
女は素早くレジカウンターから出て、啓太の隣に並び、啓太の代わりに金を払った。
「あのね、小学生はビールを買っちゃいけないのよ」
「へへへ、ばれたか」
「じゃあ、もうすぐ仕事が終わるから、ここで待ってなさい」
「はい、お母さん」

レジの女は、啓太の母親だった。
お父さんとケンカして家を出たお母さんは、近所のコンビニで働きながら、ときどき啓太の様子を見に行っていた。
「お母さん、ここで働いてたんだね。お父さん、知ってたのかな」
「昼間なら見つからないと思ったのに、どこかで聞いたのね」
「ねえ、お母さん、家に帰って来てよ。お父さんとふたりだと面倒くさいよ」
「そうね。子供にビールを買いに行かせるお父さんじゃ、しょうがないわね。きつく叱ってあげるわ」
「ほどほどにしてよ。またケンカになるから」

その頃お父さんは、シンクにたまった洗い物を片付けながら、時計を見た。
「そろそろ帰ってくるかな。啓太とお母さん」


*****
童話賞に応募しようと思って考えた話ですが、犯罪めいた話じゃさすがにダメだろう……ってことで、やめました(笑)


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遠足に行きたいの [コメディー]

おやつをリュックに詰めて、テルテル坊主を吊るして、楽しみに楽しみにしていた遠足なのに、その朝突然熱が出て行けなくなる。
私は、そんな子供だった。

そして大人になり、念願の教師になって初めての遠足。
副担任として生徒たちを見守りながら、楽しく過ごすはずだった。
それなのに、遠足の朝、私はまた熱を出した。
かなりの高熱で、遠足どころかベッドからも起きられない。
担任の田中先生に電話をしたら、「仕方ないわね、ゆっくり休みなさい」と言ってくれた。

ひと眠りした午前10時、熱がすっかり下がった。
これも子供のころと同じだ。きっと精神的なものなのだろう。
起きたら母は出かけていて、ラップでくるんだおにぎりが置いてあった。
「お母さん、ありがとう。せめて遠足気分で食べなさいということね」

子供の頃は、泣きながらお弁当とおやつを食べた。
だけど私は、もう子供ではない。自動車を運転することができる。
今から車で遠足の場所に向かえば、お弁当の時間に間に合うかもしれない。
運転は割と得意だし、下見で一度行ったから場所もわかる。
ナビに頼れば最短コースを教えてくれるかも。

急いで着替えて車に乗った。行き先は、ぽんぽこ公園。
可愛い生徒たちが待っている。自慢じゃないけど、これでも割と生徒たちに人気がある。
バスの中でのクイズ大会や合唱に参加できないのは寂しいけれど、思い出は十分に作れるだろう。

道路は渋滞もなく、2時間足らずで公園に着いた。
車を降りて生徒たちを探したけれど、どこにもいない。
そういえば、駐車場にそれらしきバスもない。
とっくに着いているはずなのに、いったいどういうこと?

まさか、途中で事故に遭ったとか。
バスごとガードレールを突き破り崖下に転落したとか。
いやだ。子供たちは無事だろうか。
私は慌ててスマホを取り出し、田中先生に電話をした。
…… 出ない。田中先生、まさか死んじゃった?

嫌な予感を振り払って、学校へ電話した。
誰も出ない。きっとみんな事故の対応に追われているのだ。
ネットニュースに出ているかもしれない。
スマホを開いたが、そういったニュースはない。
事故を起こして間もないから、まだニュースになっていないのかも。
もしかしたら、崖下からまだ発見されていないのかも。
なんてことだ。生徒たちが血を流して苦しんでいるときに、私だけ無事だなんて。

とりあえず、来た道を戻ってみようと思った。
きっとあの細い山道だ。前にも事故があったと聞いている。
車に戻って動揺しながらエンジンをかけたとき、スマホが震えた。
「あ、た、田中先生からだ。もしもし、先生、大丈夫ですか?」
「それはこっちのセリフでしょ。春山先生、もう熱は下がったの?」
「私のことより、生徒たちは? 先生は?」
「何言ってるの?」
「遠足は、どうなりました? 今どこです?」
「遠足は無事に終わったわよ。昨日ね」
「き、昨日?」
「夜あなたに電話したのよ。お母様が出て、死んだように眠っていますっておっしゃっていたわ」

あ、もしかして私、丸一日寝ていた? 
「疲れが出たんじゃない? 初めての副担任で。まあ、今日は土曜日で学校もお休みだし、月曜日に元気な顔見せてよ。じゃあね」

事故じゃなかった。遠足は無事に終わった。(昨日)
何だか力が抜けたら一気にお腹が空いた。
ぽんぽこ公園の芝生の上で食べたおにぎりは、しょっぱかった。
遠足に行けなかったことが悲しかったのか、みんなが無事だったことが嬉しかったのか、自分でもわからないけど泣いていた。

さあて、帰ろう。家に着くまでが遠足よ。


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おやゆび姫育成キット [コメディー]

夫が、チューリップの鉢植えと「おやゆび姫育成キット」を買ってきた。
夫はこういう変わったものが好きで、前にも「100万コに1コ、桃太郎が入っている桃」とか、「運がよければかぐや姫に逢える竹」とか買ってきた。
今回もどうせまがい物だろうと思いながらも、花がきれいだったから育てた。

育成キットはいたって簡単。
小さな粒を花の真ん中に置き、あとは特殊な培養液と水を与えるだけ。
子供だましだと思ったが、二日後、粒がうようよ動き出した。
それはだんだん形を変えて、人間に近づいていく。
前に姉に見せてもらった、胎児の画像に似ている。
そして三日後、チューリップの真ん中に、可愛らしい赤ちゃんが誕生した。
だけどそれは、なぜか上半身しかない。
「ねえ、どうして足がないのかしら」
「歩き回ると厄介だからだろう。あくまで観賞用だから」

夫は観賞用と言ったけれど、それは日に日に成長した。
どうやら1日1歳成長するらしく、生まれて2日目に言葉を話した。
「ママ」
なんて愛らしいのでしょう。
いつまでも花の上では安定が悪いので、専用の台座(オプションで1万円)に置いた。
成長しても大きさは親指ほどしかない。小さな人形みたいで、とても可愛い。
オプションで洋服も売っていたが、高いので自分で作った。
レースのワンピース、ピンクのドレス。
私とお揃いのブラウスも作った。チューリップの刺繡よ。
毎日違う服を着せた。着せ替え人形みたいで楽しい。
「ママ、可愛いドレスをありがとう」なんて言われると、抱きしめたくなる。

異変が起きたのは、育成を始めて15日目のことだ。
おやゆび姫の声が低くなり、口の周りにうっすら髭が生えた。
「あなた、おやゆび姫が変よ。ほらみて、髭が生えたわ。不良品かしら」
夫は「ちょっと待って」と、育成キットの説明書を取り出した。
「あ…、こいつ、オスだった」
「はあ? 男? 姫じゃないじゃん!」
「髭剃りは、専用の物を使ってくださいだって。オプションで3万2千円」
「冗談じゃないわよ!」

45日が過ぎた。
ロン毛で無精ひげのおやゆび野郎が、今朝も私に話しかける。
「ママ、おはよう。いい朝だね」
「おはよう、おっさん。二度とママって呼ばないでね」
「じゃあ奥さん、オプションでイケメンになる薬売ってるけどどう? 5万円で」
「もういい!!」

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桜より〇〇 [コメディー]

桜が満開になったから、今日の合コンはお花見合コンだって。
はっきり言って夜桜なんて寒いだけ。
冷え性なのよ、わたし。
でもね、今回の合コンはレベルが高いらしいの。
IT企業のエリートだって。
桜はどうでもいいけど、とりあえず合コンには参加するわ。

あー、始まって30分で、来たことを後悔した。
寒いのよ。襟がいい感じに開いたブラウスなんか着てきちゃったから。
ダウンジャケットでも着てくればよかった。
おまけにコンタクトの調子が悪くて外しちゃったから、よく見えない。
それに、この暗さでしょう。
ライトアップされているとはいえ、エリートさんたちの顔がよくわからない。

そんなとき、隣に座った男性が、小声でささやいた。
「寒いんじゃない? ふたりで抜けて暖かいところで飲み直さない?」
そのときわたし、とても尿意を感じていたの。
簡易トイレの行列に並ぶかどうか悩んでいたところ。
行列に並んでトイレに入るのが、わたしはとても嫌いなの。
わたしのあとに待っている人がたくさんいると思ったら、落ち着けないじゃない。
空いている男子トイレに堂々と入れるオバサンに、出来ることならなりたいわ。

花見よりも男よりも、今すぐトイレに行きたいの。
だからわたしは、彼の申し出をお受けしたわ。
さりげなく立ち上がって、ふたりで輪を抜けた。
そこから一番近い居酒屋に入って、席に着くなりトイレに直行。
居酒屋のトイレが、オアシスみたいに感じたわ。
手を洗って、髪を整えて、ちょっと化粧を直して、いい感じに胸元を開けてから席に戻った。
IT企業のエリートの顔を、じっくり見てやろうじゃないの。

ところが…席に彼がいない。
行き違いでトイレに行ったのかしら?
それにしても上着もない。
「あの、この席にいた男性はどこへ行ったかしら?」
茶髪の店員に尋ねてみた。

「ああ、帰りましたよ。なんか~、明るいところで見たら~、好みじゃなかったっぽくて」
好みじゃなかった…っぽい? わたしのこと?
「お飲み物どうしますか?」
「焼酎ロックで」

桜より、男より、今夜のわたしはトイレを必要としていた。
それだけのことよ。

「焼酎おかわり」
「早え!(店員)」


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説明の多い立ち食いソバ店 [コメディー]

立ち食いソバの店の前に、長い行列が出来ていた。
よほど美味しいのだろうか。
並んだとしても、立ち食いソバなら回転も速いし、さほどでもないだろう。
そう思って、いちばん最後に並んだ。

しかし行列はなかなか減らない。
しかしここまで待つとどうしても食べたい。
根気強く小一時間ほど待って、自分の番が来た。

「いらっしゃいませ。立ち食いソバへようこそ。お客様、おひとりさまですか?」
「はあ」
「当店のご利用は初めてでいらっしゃいますか?」
「はあ」
「では、当店のシステムをご説明いたします。まず、こちらの券売機で、お好きなメニューをお選びください。たとえば、かけそばでしたら300円でございますので、百円玉を3こ、こちらの投入口にお入れください。500円玉、千円札はお使いいただけますが、五千円札、一万円札はご遠慮くださいませ。それから、もうすっかり忘れ去られている二千円札もご遠慮ください。300円を入れますと、かけそばのボタンが光ります。料金が定額に達しない場合は光りませんので、必要な金額を追加してご利用願います。さて、ボタンのランプが光りましたら、そこを人差し指、もしくはその他の指で押していただけますと、こちらの取り出し口より『かけそば』と書かれた券が出てまいりますので、それをカウンターにお出しください。おつりがある場合は、こちらの返却口をご確認ください。万が一取り忘れるようなことがありましたら、次の方が得をしてしまうシステムになっております。もしもトラブルになりましても、当方では一切関知いたしませんのでご了承ください。なお、当店はより多くのお客様にご利用いただくために、立ち食い方式をとらせていただいております。足が疲れる、だるい等の理由で座りこまれますと他のお客様に大変ご迷惑となります。当店は、完全前払い制度でございますので、お食事が終わりましたらそのままお帰り下さい。もしも満腹感を得られなかった際には、お手数ですが最初からお並びください。お客様の場合、少々体格がよろしいので、最初から大盛りにすることをお勧めいたします。大盛りの場合は50円を多く投入いただきまして、こちらのボタンを押してください。それから、お水はセルフサービスとなっております。本日は、フランスの硬水にミントをあしらったものをご用意いたしております。それでは、ごゆっくり当店自慢のソバをお召し上がりくださいませ。なお、本日シェフのご挨拶はご遠慮願っております。なにかご質問はございますか?」
「いや…」
「では、お次の方どうぞ」

こりゃ、行列出来るわ。


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天国の歓迎会(空見の日) [コメディー]

本日3月16日は、もぐらさんの呼びかけで『空見の日』となりました。
空見の日は、みんなで空を見上げようという日です。

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7時15分の空
昨日までの雨もすっかり上がり、いい青空です。

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12時の空
ぽかぽか春の陽気で、昼休みの散歩も楽しい。

今年1月に、父を亡くした私は、やはりこの空のずっと上に父がいるのかな…なんて思いながら空を見上げました。
天国で、お酒でも飲んでいるかな。
そんなことを思いながら…、空に因んだ短いお話です。

******
いやあ、天国というところは、なかなかいいですな。
まさかこうして歓迎会をやってもらえるなんてね。
まあ、どうぞ一杯。今日は無礼講だそうですよ。
あなた、現世でお会いしたことあります? 見覚えあるなあ。
お仕事は何を? はあ、公務員ですか。
お堅い職業の方とは、てんで縁がありません。人違いかな。

え? 私の職業ですか?
大きな声じゃ言えませんがね、ここだけの話、私は詐欺師でした。
そんじょそこらのケチな詐欺師じゃありません。
一流の詐欺師ですよ。いやあ、よく騙しましたよ。いろんな人を。
だけどね、一度も捕まったことがないんですよ。

そんな悪いやつがなぜ天国にって思うでしょう。
騙したんですよ。査定人をね。
だって私詐欺師だもん。
どうです、もう一杯。

ん? 手を見せろって? 手相でも見るんですか?
ははは、生命線ありますかねえ~。
いてて、何するんですか。
「逮捕する」
「え? あんた公務員でしょう?」
「警察官も公務員だ。現世でずっとお前を追っていた」
「あ~、天国サイアク。早く生まれ変わりてえ~」
「地獄へ落ちろ!」

おそまつ!
*********


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長い乾杯 [コメディー]

ご指名をいただきました長井です。
僭越(せんえつ)ながら、乾杯の音頭をとらせていただきます。

あきらくん、みさきさん、ご両家の皆さん、本日はまことにおめでとうございます。
あきらくんが我が社に入社いたしましたのは、5年前の4月のことでございます。
桜はまだ3分咲きといったところでした。
入社して一週間のころ、桜は満開になり、恒例の花見をすることになりました。
私はあきらくんに場所取りをするように言いました。
新入社員が最初に任される大役なのです。
すると、あきらくんは言いました。
「なんで場所取りとかするんすか? それって業務と関係あるんすか? だいたいこのクソ寒いのに外で花見って、頭悪いっすよね」

私はいたく感心しました。
上司に向かって堂々と意見を言えるなんて、私たちの時代では考えられません。
こいつは大物だと思いました。

その後、あきらくんは大きな契約をとってきました。
聞けば御父上が、地元ではかなり有名な建設会社の社長さんだそうで、コネを使いまくってとった契約だったそうです。
何はともあれ我が営業部の成績がぐんと上がったのは、嬉しい限りでございます。
この場を借りて、お父様にお礼申し上げます。
その後、契約書の数字を一桁間違えたり、商談中にスマホでアイドルの画像見ていたりしましたが、ご心配なく。
こっそりフォローしているのは、この私ですよ、お父様。

新婦のみさきさんは、とても聡明なお嬢さんです。
玉の輿を狙って合コンに行き、見事にできちゃった婚まで漕ぎつけた努力と執念には感服いたしました。
教会の挙式では、元カレが乱入するという珍事もございましたが、強面の方々が丸く収めてくださりホッといたしました。
「ちょーあせった~、マジかんべん」と、つぶやくみさきさんに、ちょーウケました。
あっ、失礼いたしました。

えー、おふたりが幸せな家庭を築かれることを心より願いながら、カンパイ!
あれ? みなさん、もう飲んでる…
「なげーよ」
「マジかんべんだっつうの」


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不公平な2月 [コメディー]

世の中は不公平だ。
それを知ったのは、小学生になった2月のあの日。

僕と隼人は赤ん坊の時からずっと仲良しで、幼稚園では一緒に孫悟空の役をやったし、勉強も運動も、同じくらいに出来た。
それなのに2月14日、隼人はランドセルに入りきれないほどのチョコレートをもらった。
「オレには?」と言ったら、
「なんで山田君にあげるの~? バレンタインチョコは好きな人にあげるんだよ~」
と言われた。
そうだったのか。いつも母ちゃんと姉ちゃんが当たり前のようにくれたから、女が男にチョコをくれる日だと思っていた。
ん? つまり、クラスの女子たちは、隼人を好きで僕を好きじゃないってこと?
よく見ると、確かに隼人はかっこいい。
世の中って不公平だな。

その後も、2月14日、隼人はたくさんの女子にチョコをもらって告白された。
僕は相変わらず、母ちゃんと姉ちゃんと保険のおばさんにもらったチョコをチビチビ食べた。
中学、高校と野球部に入った。
モテない理由を坊主頭のせいにしたかったからだ。
だけど一緒に野球部に入った隼人は、坊主頭にもかかわらずやっぱりモテていた。
不公平だ。

そして僕は大学生になった。
成績が同じくらいの隼人とは、大学も一緒だった。
いい加減離れたいとも思ったけれど、やっぱり気の合う親友同士だ。
一緒にいると楽しいけれど、引き立て役になっているようで、たまに切なくなる。

「ねえ、山田君、合コンしようよ」
女の子から、やたらと誘われる。
「私女の子集めるからさ、山田君は男の子集めて。それでね、ぜったい隼人君に声をかけて欲しいの。ね、お願い」
つまり、みんな隼人狙いだ。だったら隼人に声をかければいいのに、「ムリ、胸キュンで死ぬ」だってさ。

合コンではもちろん隼人のひとり勝ち。
だけど隼人は誰にもなびかない。クールなところがまたモテる。

「あーあ、隼人はいいなあ。今年もいっぱいチョコをもらうんだろうな」
「え、なに山田、チョコ欲しいの?」
「そりゃあ欲しいよ。誰かオレに本命チョコくれないかな」
「そうか。チョコってそんなに欲しいものなんだ」
ちくしょう。モテるやつの余裕の発言だな。

19歳の2月14日、今年も母ちゃんと姉ちゃんと保険のおばさんの3チョコだと諦めていた僕だったが、ついに、ついに、生まれて初めての本命チョコをもらった。
ずっと僕のことが好きだったと言ってくれたその人は、モデルみたいなきれいな顔をした18年来の親友だった。

嬉しいよ。いや、ホントに嬉しいけどさ、
なあ隼人、オレはいったいどうすりゃいいのさ。

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30歳、職業「鬼」 [コメディー]

はじめまして。
はあ…、プロフィールに書いてある通りです。
職業は「鬼」です。
どんな仕事かというと、映画の鬼役とか、子供向けイベントの鬼役とか、あとは何といっても節分の鬼です。
2月は稼ぎ時ですよ。すでにオファーが殺到しています。
収入の面では、問題ないかと。

鬼役だけで一生食べていけるのかって?
ええ、確かにCGやメーキャップの技術は上がっていますがね、本物にはかなわないわけですよ。
そうです。僕は本物の鬼です。

今では数少ない、鬼の末裔なんですよ。
ご先祖様はね、こぶとりじいさんと踊ったり、桃太郎と戦ったり、青鬼の手紙読んで泣いたりしたんですよ。
今ではすっかり人間に馴染んで、角も牙も退化してしまいましたがね。

それでね、ここからが本題なんですが、
実は鬼の世界も少子化でしてね、女の鬼が少ないんですよ。
しかも最近は、人間と結婚してしまう女が増えて困っているんです。
ほら、鬼嫁っているでしょ。
あの中に、本物いますよ。

まあ、僕も今年で30ですから、本気で結婚したいんです。
もう人間の女で妥協しようかと思っているんです。
次の節分で、彼女をお披露目したいんですよ。
だから、お願いです。
福子さんを嫁にください。

え? なに豆なんか取り出してるんですか。
用意がいいですね。まだ1月ですよ。
やっぱりそうきます?

「オニは~そと、ふくは~うち」


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