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クリスマスパーティに行こう [競作]

メリークリスマス ♪

お知らせです。

恒例となりました、もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティが、今日アップされました。
ブロガーたちが書いたクリスマスストーリーを、もぐらさんとはるさんが朗読しています。
関西と北海道、住むところは違っても、二人の息はピッタリです。

私の作品「オーナメント」も朗読してくれました。
とても素敵に読んでくれました。

まだ全部聞いていませんが、楽しみながらゆっくり聞こうと思います。
みなさんもぜひ^^

パーティ会場は、こちらです。
http://xmas-paty.seesaa.net/


では、素敵なクリスマスをお過ごしください。

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オーナメント [競作]

「明日、クリスマスツリーを飾ってね」と妻の愛子が言った。
「私、帰れそうもないし、来年からも飾れないかもしれないから」
病室の白い壁が、愛子を気弱にさせる。
今日も食事を半分以上残したらしい。痩せていく愛子を見るのが辛い。

「毎年、オーナメントをひとつ新しく買っているの。去年はクマのプーさんのオーナメントよ。ほら、あなたがメタボ検診でひっかかったでしょう。だから、お腹が出ていても可愛いプーさんにしたのよ」
去年のことなのに、やけに懐かしそうに語る。
「今年は悠斗に選ばせてあげて。あの子が好きなオーナメントを飾ってあげて」
「わかったよ。君も早く退院できるように、ちゃんと食べてくれよ」

愛子に早く元気になってほしい。僕は主治医に尋ねた。
「クリスマスに一時帰宅させたいのですが、無理でしょうか」
「うーん、奥さんの場合、車いすの生活になりますから、環境が整っていないと難しいですね」
我が家は1階が車庫で2階が住居になっている。
エレベーターなどないし、やはり難しいだろうか。

7歳の悠斗は、愛子の実家に預かってもらっている。
迎えに行くと、子犬のように走ってくる。
「お義母さん、お世話になりました」
「ゆうちゃん、とてもいい子だったわ。算数のテストで100点とったのよ」
「そうか、えらいぞ。悠斗」
義母が声をひそめて「愛子はどう?」と聞いた。
「はあ、相変わらずです。食事もあまり食べてないようで…」
「そう…。ごめんなさいね。弱い子で」
義母が涙声で言うから、こっちまで泣きそうになった。

悠斗は強い子で、入院当初は「ママ、ママ」と言っていたが、今はあえて我慢しているようにみえる。
「悠斗、明日はクリスマスツリーを飾るぞ」
「うん」
「新しいオーナメントは、悠斗がえらんでいいよ」
「オーナメント?」
「ツリーに吊るす飾りだよ」
「あ、じゃあボク、吊るしたいものがある」
「よし、じゃあ明日買いに行こう」

クリスマスイブの日、僕は無理を言って愛子を一時帰宅させた。
「無理よ。私車いすだもん。あの階段のぼれないわ」
「まかせて。僕がお姫様抱っこするから」
「重いわよ、無理よ」
「入院前なら無理だったけど、君、ずいぶん痩せたから大丈夫」
そんなわけで、僕はすっかり軽くなった愛子を抱いて階段をのぼった。

ドアを開けると、悠斗がパンッとクラッカーを鳴らした。
「ママ、お帰り!」
テーブルにはご馳走が並んでいる。
すべて買ってきた惣菜だけど、愛子が好きなものばかりだ。
「ありがとう。パパ、悠斗。ごめんね、ママ、迷惑かけてばかりで」
「そんなのいいから、ツリーを見てごらん」
愛子がクリスマスツリーを見て、思わず涙ぐむ。
ツリーには、悠斗が選んだオーナメントがたくさん吊るしてある。
今年のオーナメントは、お守りだ。
「ママが早く元気になるように、悠斗と一緒に神社を巡ってお守りを買い集めたんだ」
「すごい。素敵なオーナメントだわ。ママ、頑張って早く治すからね」
愛子はそう言って、骨折した足を擦った。

愛子は交通事故に遭って、両足を骨折した。
もともとネガティブな性格の彼女は、すっかり悲観的になり泣いてばかり。
ちゃんとリハビリすれば、すっかり治るというのに。

「ママ、やっとリハビリ頑張る気になってくれたね」
「うん。世話の焼けるママだね」
悠斗と僕がそんなふうにささやきあっているのをよそに、愛子はフライドチキンにかぶりついている。
「食欲が出てきたわ。やっぱり家はいいわね」
おいおい、食べ過ぎないでくれよ。
お姫様抱っこが出来なくなるからさ。

愛子の笑顔と悠斗の笑顔。来年は3人でツリーを飾ろう。

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*もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティに、今年も参加します。
どんな作品が集まるか、楽しみですね。


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good-by [競作]

修は、入院中の叔父を見舞うために神戸に来た。
元気そのものだった叔父が、あんなに痩せてしまった。
ショックだった。
今日中に東京に帰らなければならないが、このまま帰る気になれなかった。
たしかこの辺りに、以前叔父と来たバーがあった。「海神」という名前だった。
少しだけ飲んでいこうと、記憶をたどって店に行った。

「いらっしゃいませ」
静かな店だ。穏やかで人のよさそうなマスターが修を安心させた。
たしか「鏑木さん」と叔父は呼んでいた。

修がカウンターに座ると鏑木は、高木と書かれたボトルを手に取った。
「こちらでよろしいですか?」
「え?僕のこと、憶えてるんですか?」
「高木さんの甥御さんですよね。高木さんから、あなたが来たら飲ませてくれと言付かっています」
「叔父さんらしいな」と思いながら、修は水割りをゆっくり飲んだ。
もう長くはないと知りながら、神戸を訪れる修のためにボトルを入れたのだろう。

「叔父は僕を、自分の息子のように可愛がってくれました」
「ここでも、よくあなたの話をしていました」
「もう一度、飲みたかったな」
しんみりした空気を振り払いように、修はおかわりを頼んだ。
こんな寂しい飲み方を、叔父は望まない。楽しい酒が好きな人だ。

時計を気にしながら、「また来ます」と席を立った。
ボトルはまだ半分ほど残っている。

数か月後、修は再び海神を訪れた。
「いらっしゃいませ」
鏑木は、グラスを磨く手を止めた。
修に支えられて、別人のように痩せた高木が力なく「よお」と手を上げたからだ。
「高木さん、お久しぶりです」
「ボトルを全部、修に飲まれちゃかなわんからな」
病院から、外出許可をもらってきたという。
「最後の晩餐や」と高木が笑い、「毎日そう言いながら食ってるよね」と修がさらに笑う。

高木は、かなり薄く作った水割りに、少し口をつけただけだ。
それでも明るい笑顔は健在だ。
「俺には子供がいないから、修と飲めるのはほんま嬉しいんや」
「叔父さん、それ55回は聞いたよ」
「そうか。そしたらあと45回言おう。100回できりがいいやろ」
「勘弁してよ」
微笑ましいふたりに、鏑木もつられて笑った。
彼らには、どれだけの時間が残されているのだろう。
小一時間ほどで、席を立った。
「また来るよ」と高木が弱弱しく手を上げた。
修が、鏑木にだけ聞こえるように「最後に来られてよかったです」と言った。

ふたりを見送って、少し残ったボトルを下げると、テーブルに水滴で描かれた文字が見えた。
『good-by』
また来ると言ったのに…。鏑木は思わず目頭をおさえた。

秋の夜風がいくらか肌寒い。
修は高木の身体を気遣いながら、ゆっくりタクシーに乗り込んだ。
「いい夜やったな」
高木が絞り出すような声でつぶやいた。
「そうだね」
修は、そう答えるのがやっとだった。

**********
雫石鉄也さんのブログから生まれた「バー海神」
とても素敵なお店なので、サイドストーリーを書きました。
雫石さんのお話はこちらです。
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/a194d1e39a491e43ff24434ad3c5c5e1

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そら君のお仕事 [競作]

僕は「そら」。
人間界では、ネコっていう分野に属しているんだ。
北海道っていうところに住んでいて、ご主人様は「はるさん」だよ。

「そら君ったらまたキーボードで寝てる。パソコン出来ないじゃん。もう!ふて寝してやる」
やれやれ、はるさん、また寝ちゃったよ。
さて、はるさんが寝たところで、ひと仕事さ。
カシャカシャカシャ。
すごいでしょ。僕、ブラインドタッチも出来るんだよ。
動画を作るのもお手の物。
ミュージックは、その日の気分で。
カシャカシャカシャ。

「あ、ちょっと寝すぎちゃった。春ってホントに眠いわ。ブログアップしなきゃ。まずは動画を…あれ?出来てる。音楽も…いい感じに仕上がってる。あれ?あたしいつの間に作ったんだろう。寝てる間に幽体離脱?それとも超能力?いずれにしても、あたし天才かも」

はるさん、本当におめでたい人だな。
いつもね、僕が作っているんだよ。
「にゃ~♪」
「あら、どうしたの、そら君。なに甘えてるの?かわいいなあ。そうだ!写真撮ってブログにアップしよう」

よしよし。作戦成功! これでまたアクセス数が増えるぞ。
僕、人気者だから。
色んなポーズでキメテやる。

はるさんが、コーヒー飲んでる間に、僕はもうひと仕事。
カシャカシャカシャ。
『こちら、コードネーム:クリスタルスカイ。ネコブログ増進プロジェクト、順調にゃり。世界中がネコブログ一色になる日は近いにゃり』

「あ~、そら君またキーボードで寝てる。可愛いからいいか」

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父変える [競作]

「ただいま」
「お帰り…え?あなた誰?」
「誰って…おまえの亭主だよ」
「顔がちがうわ」
「整形したんだよ。びっくりした?」
「じゃあ、海外出張って嘘だったのね」
「そう。みんなを驚かそうと思ってね。どう?おまえの好きなキムタクにしてみたんだけど」
「はあ?どこがキムタクよ」
「目だよ。目をキムタクにしてもらったんだ」
「さっぱりわからないわ」

「お父さんお帰り…あれ?お父さんじゃないの?」
「お父さんだよ、ミホ。整形したんだ」
「マジで?」
「ミホの好きなマツジュンみたいだろう?」
「はあ?どこが?」
「マユゲをマツジュンにしたんだけど、わからない?」
「マユゲだけマツジュンでも意味ないじゃん」

「お父さんお帰り…あれ?お父さんじゃないの?」
「お父さんだよ、ユキ。整形したんだ」
「マジで?」
「ユキの好きな羽生結弦みたいだろう?」
「はあ?どこが?」
「鼻を羽生結弦にしてみたんだ」
「やめてよ。羽生君に謝って!」

「父さんお帰り…あれ?父さんじゃない」
「父さんだよ、ケンジ。整形したんだ」
「すげえ」
「ほら、ケンジの好きなマユユみたいだろ」
「どこがマユユだよ」
「ほら、顔の輪郭をマユユにしてみたんだ」
「気持ちわりーよ」

「おかえり。はっ?おまえは誰じゃ」
「おじいちゃん、ただいま。僕だよ。あなたの息子だよ」
「顔がちがうぞ」
「整形したんだよ」
「なんじゃと?」
「ほら、この口見て。おじいちゃんの好きな、いかりや長介の口にしたんだ。ついでに頭はカトちゃんのハゲヅラにしてみた」
「わしが好きなのは島倉千代子じゃ」
「あ、そうだっけ。じゃあ、やり直してくる」

一同 「もう帰ってくるな!」

*****

これは、矢菱虎菱さんのブログから始まった競作です。
矢菱さんが「父帰る」3部作を書き、その後海野久実さんが「父孵る」を書き、雫石鉄也さんが「父替える」を書きました。
どれもそれぞれ面白い。

私も思わず便乗です^^
どなたか、参加しませんか。競作って楽しいですよね。はるさん!

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ベルを鳴らして [競作]

イブの夜、バー海神のランタンが灯ると、それを待っていたように勢いよく扉が開く。
「メリークリスマス」
陽気に入って来たのは、赤い服に白い髭の老人だ。手にプレゼントを持っている。
「ウイスキーをロックで」
早口で言うと、カウンターの椅子にドスンと腰を下ろす。
「あまりゆっくりできないんだ。なにしろトナカイを外で待たせているからね。駐車違反の切符を切られたりしたら大変だろう」
鏑木は、思わずクスッと笑いながら、
「日本の警察もそんなに野暮じゃないでしょう」と返した。
彼は「そう願いたいね」と豪快に笑った。

ウイスキーを飲み干すと老人は、「さあ、仕事仕事」と立ち上がる。
そして、たったひとつしかないプレゼントを持って店を出て行く。
愉快な人だ。
老人は毎年クリスマスイブに現れて、ウイスキーを一杯だけ飲んで帰る。
鏑木は、このせっかちなサンタクロースが好きだった。
プレゼントを待ちわびる小さな子供のように、鏑木はイブの夜を楽しみにしていた。

その年のクリスマス、いつもの時間に扉が開いた。
入って来たのはいつもの老人。
白い髭は健在だが、赤い服は着ていない。
「水割りをくれないか。今日は少しゆっくりできそうだ」
いつもの陽気さはなく、静かに椅子に座った。
「おや、プレゼントを待っている子供たちがいるんじゃないですか?」
水割りのグラスをそっと置いて、鏑木が言うと、彼は小さく笑った。
「マスター、あんたはいい人だな。こんな老いぼれの遊びに最後まで付き合ってくれて」
「最後…とは?」
「サンタクロースはもう引退だ。必要なくなったのでね」
「どういうことです?」
「この夏に、妻が亡くなったんだ」

彼の妻は、数年前に体調を崩しふさぎ込んでいた。
妻を元気づけようと、クリスマスイブの夜にサンタクロースに扮装して帰った。
妻は思いのほか喜び、子供のようにはしゃいで元気を取り戻した。
それから毎年、彼はサンタクロースになった。
「シラフじゃさすがに恥ずかしいからな、ここで一杯ひっかけて帰ったというわけさ」
「そうだったんですか」
「もう待ってる人もいないし、サンタクロースは廃業さ」
寂しいような、どこかほっとしたような呟きだった。
「それで、トナカイはどうしました?」
「トナカイか…。トナカイは、森に帰したよ」
老人が、いつものように豪快に笑った。

老人は、三杯の水割りを飲んで席を立った。
椅子にリボンがかかった箱が置いてある。
「お忘れ物ですよ」
鏑木が声をかけると彼は、振り返って目を細めた。
「あんたへのクリスマスプレゼントだよ」

箱を開けると、ベルが入っていた。サンタクロースの鈴ではない。
扉に取りつける、カウベルだ。
「ありがとうございます」
顔を上げると、老人はもういなかった。

数年が過ぎた。カウベルは、今でも優しい音で客が来たことを知らせてくれる。
クリスマスが近づくと、鏑木はランタンを灯すたびに願った。
陽気でせっかちなサンタクロースが、ベルを鳴らして入ってくることを。

「いらっしゃいませ」
「メリークリスマス!」

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青いピアス [競作]

お気に入りのピアス。深い海のような青。
「きれいな色ですね」
マスターが、すべてを包むような優しい声で言った。

初めてひとりでバーに入った。慣れないハイヒールで足がボロ雑巾のようだった。
明るいカフェの気分ではなかった。
まだ時間が早いせいか、客はあたしひとりだ。。
何を頼んでいいかわからなくて、とりあえず注文したビールをゴクゴク飲んだ。

「就職活動ですか?」
「わかります?…って、わかるよね。似合わないリクルートスーツ着てるんだもん」
カウンターの椅子でハイヒールを脱いで足をぶらつかせる。
こんな行儀の悪い客にも、マスターは優しく微笑む。
面接官が、この人だったらよかったのに。

「変な話よね」
「何がです?」
「みんな同じようなスーツ着て、マニュアル通りの自己紹介して、本当の自分を見せないまま内定もらってバカみたいに喜ぶんだよ」
「そうですね」
「まあ、あたしも髪を黒く染めて『御社が…』とか言ってるんだから笑っちゃう」

「では、そのピアスは、ささやかな抵抗といったところですか?」
「そうね…」
あたしは、青いピアスを指先でつついた。
耳ではなく、鼻に付けられたピアス。すべての面接官に渋い顔をされた可哀そうなピアス。

見たこともないきれいなカクテルが、カウンターに置かれた。
「ブルーラグーンです」
青く澄んだ湖のようなカクテル。
「きれい…」涙がでそうだ。
きっとどこかに、あたしの鼻ピアスをわかってくれる人がいる。
このマスターのように。
「もう少し頑張ってみようかな」
青いカクテルを一口飲んで、たぶん今日初めて、あたしは笑った。

「面接官みたいなことを聞いてもいいですか?」
「なに?」
「どうしてこの店を選んだのですか?」
あたしは、背筋をぴんと伸ばした。
「はい、お店の名前が気に入ったからです。『海神』っていう名前が。私はずっとバンドのボーカルをやっていて、そのバンドの名前が『ポセイドン』です。それで、何となく運命みたいなものを感じてこの店に入りました。私、たとえ社会人になっても、すごく楽しかったバンドのことや、トレードマークの鼻ピアスを、なかったことにしたくないんです」
「よくわかりました。ありがとう」

やっぱりこの人が面接官だったらいいのに。
クスッと笑って心の中でつぶやきながら、あたしは初めてのカクテルを飲み干した。
「おかわり下さい」

お.png

********
雫石さんのブログから生まれたバー『海神』
はるさんがサイドストーリーを書いて、素敵だったので私もお仲間に入れていただきました。
みなさんも、一緒に飲みませんか(笑)

雫石さんのブログ
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/f9682c60e8bdeae270e37dc31675f8fc

はるさんのブログ
http://haru123fu.exblog.jp/22728126/

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極楽ツアー(空見の日) [競作]

DSCF0676.JPG
今日は、もぐらさんの呼びかけで、「空見の日」となりました。
みんなで空を見上げましょう。
今日の空は、雲一つない青空。こんなさわやかな気持ちで空を眺めることが出来るなんて、幸せですね。
空に因んだ話を書こうと思ったら…こんな話になりました(汗)

『極楽ツアー』

アテンションプリーズ。
本日は、当社の『極楽ツアー』にご参加いただき、まことにありがとうございます。
極楽は、空のずっとずっと上にございます。
超高速運転でまいりますので、シートベルトはしっかりとお締めください。
所要時間は7時間、極楽での滞在時間は3時間でございます。
それ以上いたら、帰りたくなくなりますのでご注意ください。
なにしろ極楽でございますから、居心地がいいのでございます。

それから、食事は機内かターミナルでお済ませください。
極楽には、レストランもファーストフードもございません。
ご存知かと思いますが、故人は食事をとりませんので。
それから、故人との写真撮影はご遠慮ください。
心霊写真になってしまいますので。

故人との面会をご希望の方は、到着後名簿にて確認の上、お申し込みください。
もしも名簿に名前がなかった場合、極楽ではない他の場所にいらっしゃる可能性がございますのでご了承ください。それはどこか…わたくしの口からは申しかねます。

はい?質問でございますか?どうぞ。
どの時代の祖先まで遡って会えるか…でございますね。
お答えします。せいぜい明治時代まででございます。それ以前の方は、もう生まれ変わっております。
まれに、織田信長や聖徳太子に会いたい目的で参加される方がいらっしゃいますが、到底無理な話でございます。徳川埋蔵金の在り処を聞き出そうとしても無駄ですよ。

他に質問はございますか?
はい?お土産でございますか?
極楽にはお店はございません。もちろんコンビニなんて皆無でございます。
でも、ターミナルに少々のお土産を置いてあります。
人気のお土産は、「極楽浄土水」安くて美味しいお水でございます。
あとは「天国のタルト」「蓮の葉せんべい」「釈迦に豆鉄砲」がございます。
「釈迦に豆鉄砲」は、ただの豆菓子でございます。あ、このネーミング、ウケましたか。
ありがとうございます。わたくしが名付け親でございます。

他に質問は…あ、ただいま機体は、かなりの上空に上がってまいりました。
この先は、ほのかなお線香の香りに包まれて、眠っていただきます。
極楽が近くなりましたら、またご案内させていただきます。
では、みなさま、安らかに…失礼いたしました。ごゆっくりお休みくださいませ。
南無阿弥陀仏…。

DSCF0677.JPG

本当に青い空でしょう。
もっとさわやかな話にしたかったけど…もぐらさん、ごめん(笑)
こんなツアーがあったら、ちょっと行ってみたいですよね^^

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オー、ソラミヨ [競作]

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もぐらさんの呼び掛けにより、本日「空見の日」となりました。
みんなで空に向かって黙祷。
そして空の写真をブログにアップしましょう…という企画です。
もぐらさんのブログはこちらです。

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まだつぼみの桜と空。 本日8:00の空です。
黙祷。。。

こちらは小説ブログなので、短いお話をひとつ。

****

幼稚園の卒園式。
みんなで風船を空に飛ばした。
園児の夢を載せた風船は、空に吸い込まれるように、ぐんぐん昇って行った。

『パテシエになりたい』 アヤちゃんの夢。
『デザイナーになる』 みーちゃんの夢。
『サッカーせんしゅになりたい』 ケンちゃんの夢。

風船にくくりつけた夢は、空の神様に届くでしょうか。
みんな、笑顔で空を見上げていた。

「今年もたくさんの風船が来たな。しかし大人になっても同じ夢を持っている子が何人いるだろう」
「神様、そんなことはどうでもいいですよ。ほら、子供たちの笑顔を見てください」
「うん、キラキラしてるな」
「あ、神様、『せかいへいわ』って書いている子がいますよ」
「ほー、将来大物だな。その願いだけは、何としてもかなえてあげたいものだ」
「そうですね。空は世界中に繋がってますからね」

*****

空見の日にふさわしい、よく晴れた日でした。
世界平和を、そして1日も早い復興を祈って黙祷しました。

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チキンの約束2 [競作]

みなさん、メリークリスマス!
おいら、コタロウです。
あれ?忘れちゃった?1年ぶりだもんニャ~
おいらの活躍が見たい人は1年前にワープニャ!
http://blog.so-net.ne.jp/rin-ohanasi/2009-12-24

[クリスマス][クリスマス][クリスマス][クリスマス]
さて、今年もクリスマスがやってきた。
その日は、珍しく朝から雪だった。
ふたりの子供たちは大はしゃぎだけど、ママさんは外を見ながら曇り顔だ。
「困ったわ。チキンを買いにいけないわ」

お昼を過ぎても、雪はやみそうにない。
「仕方ないな。今年はチキンなしのイブだわ」

おいらは、絶え間なく降る雪をながめて、何とか役に立つことはできないかと考えていた。
その時、雪だるまがこちらに向かって歩いてきた。
なんニャ?

雪だるまは、おいらにメッセージを伝えた。
『裏のガレージに行け』
『ガレージに何があるニャ?』
『行けばわかる』

おいらは、ママさんに「外に出たい」と訴えた。
「まあ、コタロウどうしたの?この寒いのに外に出たいの?
ネコはコタツで丸くなるものだと思っていたわ。お前はイヌみたいなネコね」

ママさんは呆れ顔でドアを開けてくれた。
「寒いからすぐに戻ってくるのよ」

外はすごく寒かった。
ひゃ~!冷たい!雪って冷たいんだニャ。

ガレージに行くと、籠に入ったチキンが置いてあった。
『チキンだ』

『ああ、その通り。オレはチキンだ』
チキンがしゃべった。あれ?1年前もこんなことがあったニャ。
『どういうことニャ?』
『去年オレの仲間があんたに世話になっただろう。いつか恩返しがしたかったんだ』
『でも、おいら君を食べちゃうよ』
『いいさ。食べられるために来たんだ。焼くなり揚げるなり、好きにしてくれ』
『わかった。ママさんは料理が上手だから、きっと美味しいローストチキンになるよ』

おいらはチキンを持って家に帰った。
だけどママさん、喜ぶどころか怒り出した。

「ちょっとコタロウ!それどこから持ってきたの?
まさか、よそのお家から?ダメじゃないの。ああ、困ったわ。どうしましょう」

ちがうニャ~。もらったんだよ~。
どうすれば信じてくれるかな。

そう思っていたら、雪だるまがトントンと窓を叩いた。
「あら…」
ママさんは、途端に笑顔になった。

雪だるまは、いつもまにか赤い服を着ていた。
「サンタからのプレゼントってことね。まったくお前は、ときどき不思議なネコね」
ママさんがそう言って、おいらの頭をなでたから、「にゃー」と甘えた声で鳴いてみせた。
実はおいらは甘え上手なんだ。

その夜、賑やかな食卓に、美味しいチキンが並べられた。
『チキンさん、ありがとう』
いい匂いのローストチキンに生まれ変わったチキンさんは、家族の笑顔に囲まれて、しあわせかも…
って、おいらは思った。

雪は、いつのまにかやんでいた。雪だるまも、いつのまにかいなくなっていた。
おいらはフカフカの絨毯で丸くなりながら、雪の日には、二度と出かけたくないニャー…と思っていた。

ちきん.JPG

クリスマス競作作品です。
競作、盛り上がりました。
いったい何人の方が参加したでしょう。
とても楽しかったです。
みなさんのお話はこちらから↓
http://blog.goo.ne.jp/kyosaku1224

*今回私は、自分の1年前のお話とコラボしました。
出前おそ!あ、間違えた… 手前味噌ですみません(笑)

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