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TO-BE小説工房、最優秀 [公募]

公募ガイド「TO-BE小説工房」で、最優秀賞をいただきました。
課題はカメラでした。
嬉しいことに、3度目の最優秀です。

上手く書けても書けなくても、とりあえず毎回出そうと決めています。
課題に沿って書くのは、すごく勉強になるし、このような賞をいただくと、
本当に励みになります。
これからも、よい報告ができるようにがんばります^^

作品は、公募ガイド3月号で読むことができます。
タイトルは「忘れ物」です。
よかったら、読んでみてください。

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暦の上では

「梅の花が咲いたよ」と、母からの電話。
「今年は早いねえ。だけどまあ、暦の上では春だからね」
「まだ2月だよ」
「立春過ぎたら春なのよ。暦の上ではね」
「ふうん」
「ところであんた、帰ってくる気はないの?」
いつもの会話。こっち(東京)で就職するって言ったはずなのに。
田舎が嫌で東京の大学を選んだのに、何が悲しくて地元で就職するんだよ。
電話を切って、スマホをベッドに放り投げた。

就職はまだ決まらない。だけど絶対帰らない。
こっちには付き合って2年の恋人もいる。
彼女は大学のゼミが一緒で、やはりまだ就職が決まっていない。
でもお互いにバイトをしているし、いざとなったら一緒に暮らしてもいい。
僕はあまり焦っていなかった。

ところが、母から電話があった数日後、彼女から突然別れを告げられた。
「ごめんね。私、札幌に帰ることになったの」
「え? どうして」
「地元で就職するの。実は、もう決まってる」
最初からそういう約束で東京の大学に通わせてもらったと、彼女は泣きながら何度も謝った。
「なかなか言い出せなくてごめんね。今までありがとう」

僕はワンルームの小汚いアパートで、ごろんと寝ころんだ。
シミのある天井を眺めながら、ここにいる意味を考えた。
就職は決まらない。彼女はいない。こっちに残る意味ってあるかな。

そんなとき、再び母から電話があった。
「梅の花が咲いたよ」
「この前聞いたよ」
「この前よりたくさん咲いたのよ。このところ暖かいでしょう。なにしろ…」
「はいはい、暦の上では春なんでしょ」
「その通り」
いつもは鬱陶しい会話が、なぜか優しく思えた。

「ねえ母さん、俺、帰ろうかな」
思わずぽろりとつぶやいた。
「あら、梅の花は東京でも咲いているでしょう。それに帰ってくるなら、もっと満開になってからの方がいいわよ」
母が望んでいる言葉を口にしたのに、軽くスルーされた。
2泊3日の帰郷とでも思ったのだろう。ちょっとウケる。
苦笑しながら電話を切った。

そんなわけで、僕は今日も面接に行く。
住宅街の片隅に、梅の木があった。
いつもは気にも留めないのに、立ち止まって花を数えてみた。
思ったより多くの花が咲いている。
「暦の上では春なんだな」
誰にともなくつぶやいて、背筋を伸ばす。
風はまだ冷たいけれど、僕は前を向いて歩き出した。


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不公平な2月 [コメディー]

世の中は不公平だ。
それを知ったのは、小学生になった2月のあの日。

僕と隼人は赤ん坊の時からずっと仲良しで、幼稚園では一緒に孫悟空の役をやったし、勉強も運動も、同じくらいに出来た。
それなのに2月14日、隼人はランドセルに入りきれないほどのチョコレートをもらった。
「オレには?」と言ったら、
「なんで山田君にあげるの~? バレンタインチョコは好きな人にあげるんだよ~」
と言われた。
そうだったのか。いつも母ちゃんと姉ちゃんが当たり前のようにくれたから、女が男にチョコをくれる日だと思っていた。
ん? つまり、クラスの女子たちは、隼人を好きで僕を好きじゃないってこと?
よく見ると、確かに隼人はかっこいい。
世の中って不公平だな。

その後も、2月14日、隼人はたくさんの女子にチョコをもらって告白された。
僕は相変わらず、母ちゃんと姉ちゃんと保険のおばさんにもらったチョコをチビチビ食べた。
中学、高校と野球部に入った。
モテない理由を坊主頭のせいにしたかったからだ。
だけど一緒に野球部に入った隼人は、坊主頭にもかかわらずやっぱりモテていた。
不公平だ。

そして僕は大学生になった。
成績が同じくらいの隼人とは、大学も一緒だった。
いい加減離れたいとも思ったけれど、やっぱり気の合う親友同士だ。
一緒にいると楽しいけれど、引き立て役になっているようで、たまに切なくなる。

「ねえ、山田君、合コンしようよ」
女の子から、やたらと誘われる。
「私女の子集めるからさ、山田君は男の子集めて。それでね、ぜったい隼人君に声をかけて欲しいの。ね、お願い」
つまり、みんな隼人狙いだ。だったら隼人に声をかければいいのに、「ムリ、胸キュンで死ぬ」だってさ。

合コンではもちろん隼人のひとり勝ち。
だけど隼人は誰にもなびかない。クールなところがまたモテる。

「あーあ、隼人はいいなあ。今年もいっぱいチョコをもらうんだろうな」
「え、なに山田、チョコ欲しいの?」
「そりゃあ欲しいよ。誰かオレに本命チョコくれないかな」
「そうか。チョコってそんなに欲しいものなんだ」
ちくしょう。モテるやつの余裕の発言だな。

19歳の2月14日、今年も母ちゃんと姉ちゃんと保険のおばさんの3チョコだと諦めていた僕だったが、ついに、ついに、生まれて初めての本命チョコをもらった。
ずっと僕のことが好きだったと言ってくれたその人は、モデルみたいなきれいな顔をした18年来の親友だった。

嬉しいよ。いや、ホントに嬉しいけどさ、
なあ隼人、オレはいったいどうすりゃいいのさ。

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30歳、職業「鬼」 [コメディー]

はじめまして。
はあ…、プロフィールに書いてある通りです。
職業は「鬼」です。
どんな仕事かというと、映画の鬼役とか、子供向けイベントの鬼役とか、あとは何といっても節分の鬼です。
2月は稼ぎ時ですよ。すでにオファーが殺到しています。
収入の面では、問題ないかと。

鬼役だけで一生食べていけるのかって?
ええ、確かにCGやメーキャップの技術は上がっていますがね、本物にはかなわないわけですよ。
そうです。僕は本物の鬼です。

今では数少ない、鬼の末裔なんですよ。
ご先祖様はね、こぶとりじいさんと踊ったり、桃太郎と戦ったり、青鬼の手紙読んで泣いたりしたんですよ。
今ではすっかり人間に馴染んで、角も牙も退化してしまいましたがね。

それでね、ここからが本題なんですが、
実は鬼の世界も少子化でしてね、女の鬼が少ないんですよ。
しかも最近は、人間と結婚してしまう女が増えて困っているんです。
ほら、鬼嫁っているでしょ。
あの中に、本物いますよ。

まあ、僕も今年で30ですから、本気で結婚したいんです。
もう人間の女で妥協しようかと思っているんです。
次の節分で、彼女をお披露目したいんですよ。
だから、お願いです。
福子さんを嫁にください。

え? なに豆なんか取り出してるんですか。
用意がいいですね。まだ1月ですよ。
やっぱりそうきます?

「オニは~そと、ふくは~うち」


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ジョンの代わり

大好きだったジョンが死んだのは、寒い冬の夜だった。
僕はまだ9歳で、妹は7歳だった。

その夜は、何となく別れの予感がしたのだろう。
僕たち家族は、深夜を過ぎても誰も眠ろうとしなかった。
いつもだったら「早く寝なさい」という母も、眠い目をこすっている妹を抱きしめていた。
父はウイスキーを飲みながら、覚悟を決めたように何度か息を吐いた。
そしてジョンは、眠るように静かに逝った。
硬くなったジョンの感触は、今でも僕の胸に残っている。

その話をしたら、彼女は泣いてくれた。
「いい家族ね」と言ってくれた。
「ジョンは、何歳だったの?」
「たぶん、15歳くらいじゃないかな。僕が生まれたときはすでに家にいたんだ。僕と妹が背中に乗っても、ちっとも嫌がらないヤツでね」
「優しかったのね。でも、15歳なら長生きした方よ」
「そうかな。もっと生きて欲しかったよ」
「きっとジョンは幸せだったわね。いいご家族に見守られて」
「うん。そうだといいね」

「あなたがもうペットを飼いたくないという気持ちは、よくわかったわ」
「でもね」と、彼女は分厚いカバンから、パンフレットを取り出した。

「こちらの商品をご覧ください。最新のペットロボット『愛犬3号』です。毛並みも吠え方も肉球も、愛らしい目も、犬とまったく変わりません。その上エサはいらないし、排泄はしないし、なにより一生あなたの傍にいますよ」

いろんな種類のロボット犬が、パンフレットの中から僕を見ている。
「どうです? お安くしますよ」
「いや、でも」
「ジョンそっくりに造るオプションもありますよ。ちょっとお値段は高くなりますけどね。まあ、あまりこだわらないのであれば、こちらがお勧めです」

やり手のセールスレディは、もはや僕とジョンの想い出に興味はない。
僕は丁重にお断りして帰ってもらった。
彼女は、「泣いて損した」と言わんばかりに僕を睨んで帰って行った。
ちょっと美人だったけど、ペットの押し売りなんてごめんだよ。
そもそもジョンが犬だなんて、僕はひとことも言っていない。

大好きだった亀のジョンは、たった15年で死んでしまった。
一万年生きると信じていたのにさ。


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授かりました [公募]

半年間の海外赴任から帰った日、妻の沙織が神妙な顔で言った。
「子どもを授かりました。九週目に入ったところです。つまり、妊娠三ケ月です」
「えっ? いや、僕は半年前に海外赴任になって、その間一度も家に帰っていないじゃないか。いったい誰の子だ」
面食らって慌てふためく僕を尻目に、沙織は至って冷静だ。
「神様から授かった子どもよ」
「はあ?」

沙織には、幼少期からずっと信じている神様がいる。
南の島に昔から伝わる由緒ある神で、沙織の祖母がその島の出身だったから当然のように信じ、毎朝祈りを捧げている。
新婚だったにも関わらず海外赴任についてこなかったのも、神への祈りが疎かになることを恐れたからだ。

時差ボケもあって頭の整理がつかないまま、僕は同僚二人と酒を飲んだ。
「なんだ、そりゃ」
鈴木は腹を抱えて笑った。
「そりゃ、間違いなく奥さんが浮気してできた子だろう。聖母マリアじゃあるまいし、すげー言い訳だな」
「でもさ、とても嘘をついているように思えないんだ。後ろめたい気持ちが、まるで感じられないし、神様に祈るときみたいに穏やかな顔で腹を擦っているし」
ずっと黙って聞いていた山下が、腕組みをしながら「そういう話、聞いたことがある」と静かに言った。
「知り合いに、小さな島の出身者がいるんだけど、住民がすべて島を離れて、今は無人島になっているんだ。その島に祀られていた神様は、島の記憶を残すために、神を信じ続ける人に命を授けるそうだよ」
そういえば、沙織が信じる神が祀られた島も、今はもう無人島になっている。
「奥さんとよく話し合ってみろよ。神様のことも、ちゃんと理解した方がいいな」
山下は、いつも的確な答えをくれる。
その横で赤い顔をした鈴木が「ありえねえだろ」と、相変わらず笑っていた。

翌日、僕は沙織と向き合った。
沙織は、壊してはいけない宝物を預かったように、優しくお腹を撫でていた。
「つまりその子は、神様ということかな?」
「そうじゃないわ。神様が授けてくれた、私とあなたの子よ」
「将来は教祖様になるとか、そういうことじゃないの?」
「宗教団体じゃないのよ。私たちの神様は、私たちの心の中にいるの」
「僕は、その神の子と、どう接すればいい?」
「父親として普通に接するのよ。もしかしたら、あなたに似ていないかもしれない。だけど神様があなたと私を信じて授けてくださったのよ。ねえ、一緒に育てましょう」

完全に理解したわけではないけれど、僕は沙織を信じることにした。
沙織に男の影などまるでない。
かいがいしく家事をこなし、夕飯は僕の好きなおかずを並べてくれた。
休日はゆっくり散歩をして、胎教にいい音楽を聴いて過ごした。
お腹が大きくなると、不思議なことに父親としての自覚が芽生え、無事に生まれることだけを願った。

「奥さん、そろそろ臨月か」
そう言いながら、山下がビールを注いだ。
「いいのか? 他の男の子供かもしれないぜ」
鈴木は未だに疑っている。
「生まれたら見に来いよ」
僕の心は穏やかだ。沙織は今まで以上に熱心な祈りを捧げるようになった。
「子供と、あなたの分も祈っているのよ」
菩薩のように優しい顔だ。僕はお腹の子供に話しかける。「お父さんだよ」

しばらくして、沙織は女の子を産んだ。沙織にそっくりな可愛い子だ。
「島の記憶を持って生まれたのかな」
「島の記憶? なにそれ?」
「前に同僚の山下が言っていたんだ。今は誰も住んでいない島の記憶を残すために、神様が信者に命を授けるって話」
「そうか。そういうことなのね」
沙織が愛おしそうに赤ん坊の頬を撫でた。

***
数日後、ひとりの男が沙織の病室を訪ねた。
「あら、山下さん、仕事中じゃないの?」
「抜けてきたんだ。土日に来るわけにいかないだろう。それよりおめでとう。可愛い女の子だね。俺に似なくてよかった」
「ええ、ちょっとドキドキしてたわ」
「しかし君も嘘がうまいな」
「あなたこそ。山下さんのおかげで、あの人すっかり信じたわ」
「罰が当たるかな、俺たち」
「大丈夫よ。私、毎日拝んでいるもの」

*******

公募ガイド「TO-BE小説工房」の落選作です。
課題は「神」でした。難しいテーマです。
今月の課題は「桜」
きれいな話を書きたいけど、まだ手付かずです。
いいご報告が出来るように頑張ります^^


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ありがとうございました

みなさま、ご心配をおかけしました。
お悔やみやお気遣いのコメントありがとうございました。

身内を亡くすのは初めてだったので、いろいろ戸惑いましたが、無事に見送ることができました。
母も元気そうなので、私は今日から仕事に行きました。

父は高齢でしたが、病院のお世話になることもなく、前日までお酒を飲んで普通でした。
お年寄りの方はよく、「ピンピンコロリで死にたい」などと言いますが、父はまさにそうでした。
きっと本人にとっても、いい最期だったと思います。

次からは、いつもの小説ブログに戻ります。
みなさま、本当にありがとうございました。

お知らせ

父が、急逝いたしました。
少しのあいだ、ブログをお休みします。

いつも読んでくださる方、コメントをくださる方、
ありがとうございます。

すぐに戻りますので、ご心配なく。
コメント返しもその時に…。

おみくじ屋

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

では、2017初のショートです。

◇ おみくじ屋 ◇

あるところに、2軒のおみくじ屋が並んでいました。
ひとつは、大吉がたくさん出るという、おみくじ屋。
ひとつは、凶がたくさん出るという、おみくじ屋。
だけどその2軒は、外観がまるで同じです。
売っている人も同じ顔です。
だって二人は、そっくりな双子なのです。

明子さんは、今年こそは運命の人と出逢いたい。
どうしても大吉を引きたいと思っていました。
ふたつのおみくじ屋の前で、大吉がたくさん出るおみくじ屋はどちらだろうと考えていました。

すると、右のおみくじ屋から出てきた人が、やけに悲しそうな顔をしています。
一方左のおみくじ屋からは、笑顔の人が出てきます。
「これはきっと、大吉がたくさん出るのは、左のおみくじ屋だわ」
明子さんはそう思って、左のおみくじ屋に入りました。

「いらっしゃい。今年最初の運試しをどうぞ」
明子さんは、おみくじを引き、ドキドキしながら開けました。
結果は…「凶」
「ウソでしょう? どうして凶なの?」
「すみません。うちは凶がたくさん出るおみくじ屋なんです」
「え、だって、さっきこの店から出てきた人は、すごい笑顔だったわよ」
「ああ、うちは凶と大凶しか入れてないので、凶を引いたということは、実に運がいいんですよ」
「まあ、そうなの。じゃあ、お隣でおみくじを引いた人が悲しい顔をしていたのはなぜかしら」
「隣は大吉と吉しか入れてないから、吉が出てしまったら運が悪いということで、がっかりしてしまうんですよ」

なるほど。
凶で喜び、吉で悲しむ。人間の心理って面白い。
明子さんはそんなことを思いながら「待ち人来らず」「恋愛成就せず」の凶のおみくじを笑顔で持ち帰るのでした。

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年末のごあいさつ

「りんさん、今年はどんな年でしたか?」
「サルの年でした」

「来年はどんな年にしたいですか?」
「トリ年になったらいいな~…と」

「大みそかは、どのように過ごしますか?」
「除夜の鐘を聞きながら、万札を108枚数えたいです」
(煩悩だらけじゃん)

「来年は、いい年になるといいですね」
「誰がいい年やねん!」

「最後に、読者の皆さんにご挨拶をお願いします(最後くらい〆てよ)」

みなさん、今年も読んでくださってありがとうございます。
楽しく、充実した一年でした。
心残りは、スマップ解散と、恋ダンスが覚えられなかったことです。
あ、ミーハーだと思われると困るので一応言っておきます。
日本経済も心配です。
髪を切りすぎて「座敷童みたいになっちゃった」と言ったら、娘に「座敷童に失礼だ」と言われました。

ともかく、みなさん、来年もよろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。


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