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ゾンビの町 [SF]

私たちの小さな町は、ある日を境にZ地区と呼ばれるようになった。
事の始まりは、ひとりの渡航者だった。
海外から帰国した男が、体調を崩してこの町の病院に入院した。
原因不明のウイルスに感染していた男は、やがて化物に姿を変え、病院の人を次々に襲った。
それは、ゾンビウイルスと呼ばれ、噛まれた人はゾンビになってまた人を襲う。
町に増えたゾンビに打つ手はなく、政府は病院周辺の地区に高い鉄の塀を立て、完全に隔離した。

私たち家族は、ゾンビに感染していない。
だけど同じように隔離され、ここから出ることができない。
塀の上に付けられたカメラと、ヘリコプターからの映像が繰り返しテレビで流された。
『Z地区のゾンビの数は、日に日に増えています。政府は特効薬の開発を急がせています。まだ感染していないみなさん。希望を持って頑張りましょう』

「いったいいつまで待てばいいの?買い物も行けないし、食糧だっていつまで持つか」と母。
「ゾンビになる前に、飢え死にしちゃうぞ」と父。
「せっかくサッカーのレギュラーになれたのに」と、中学生の弟。
「先輩と、やっといい感じになれたのに」と、高校生の私。
家の中にいれば安全と言われて1週間。私たちは、呑気に事態が収まるのを待っていた。

10日が過ぎた頃、テレビを見ていた弟が叫んだ。
「大変だよ。ゾンビが…」
そこには、誰かの家の窓を壊して、中に入るゾンビの姿が映っていた。
「家の中は安全じゃなかったの?」
「この家も危ない。窓をテープで補強しよう。あと、段ボールでふさいで光をもらすな」
私たちは、昼も暗い部屋で過ごすことになった。

食料はあとわずか。
この頃は、電波が届かないのかケイタイも使えない。テレビも映らなくなった。
「ヘリコプターも飛ばなくなったし、政府はこの町を完全に見捨てたんだ」
「そんな。私たち、ここでゾンビになるか、飢え死にするしかないの?」
「そんな二択いやだよ」
外でうろつくゾンビの気配に怯えながら、私たちは飢えと絶望でどうにかなりそうだった。

「何とかここを出る方法はないだろうか」
「そういえば、地下道があったわ」
「ああ、戦争中に造られた地下道か。子供の頃遊んで、よく叱られたな」
「あの地下道は、となり町まで続いていたはずよ」
父と母はこの町で生まれ育った幼なじみだった。
数十年前にコンクリートの蓋でふさがれたが、外すことは出来るはずだと言う。

翌朝私たちは、最後の望みをつなぐように、地下道を目指した。
最低限の荷物を持って、ゾンビの活動が最も鈍くなる午前9時に家を出た。
何体かのゾンビに出くわせたが、動きが鈍かったので上手く逃げられた。
しつこいゾンビには、サッカーで鍛えた弟の蹴りをくらわせた。

地下道の蓋は重かったけれど、家族で力を合わせてこじあけた。
中は黴臭くネズミや虫がいて気持ち悪かったけれど、私たちはこんなことで負けない。
ここを抜ければ、普通の暮らしに戻れるのだ。
少し水が溜まった暗い地下道を進み、ようやく出口にたどり着いた。

「ああ、思ったより蓋がスムーズに開いてよかった」
「もう怯えることなく外を歩けるのね」
「腹減った。何か食べよう」
「あたし、服買いたい」

となり町は、静かだった。
「誰も歩いてないわ」「大通りに出たら車を拾おう」
しかし、大通りには車どころか、人の姿もない。
「父さん、あれ見て」
弟が指さす先には、何もなかった。
ビルも家も、すべての建物が、粉々に壊されていた。
「どういうこと?」

そこに、青い顔をした数人の男女が走ってきた。
「どうしたんです?何かあったんですか?」
「宇宙生物だよ。宇宙生物が現れて、人間を片っ端から捕まえて食うんだ」
「なんだって?」
「あんたたちは、どこからきたんだ」
「Z地区だよ」
「え?どうやって来たの?」
「地下道を通って来たんだ」
「案内してくれ。Z地区に逃げよう」
「いや、でもあそこにはゾンビが…」
「宇宙生物はゾンビは食わないらしい。あいつらに食われるくらいなら、ゾンビになった方がマシだ」

「宇宙生物に食われるか、ゾンビになるか」
「いやだ…そんな二択」
不吉によどんだ黒い空を見上げながら、私たちはのろのろと地下道に戻った。

さて、この家族、どうなるでしょうか。
1、ゾンビになる 2、助かる

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コメント 8

さきしなのてるりん

そもそもゾンビとは何ぞや。一回死ぬんでしたか?となれば死ななきゃならないか。いや、途中で横道掘ってそれるかな。しかし食べるものもないし、、、うぅん、生か死かそれが問題だ。
by さきしなのてるりん (2014-10-22 19:09) 

海野久実

彼らは仕方なく地下道を通りZ地区に戻ろうとする。
地下道の途中で暗闇の向こうからたくさんのゾンビたちがやってくる。
主人公の家族たちと他の人々はそこに立ちつくし、目をつぶってゾンビたちを待ち受けた。
暗転。
数十年後。
地球には活気が戻っていた。
地上にはゾンビたちの末裔があふれ、幸せに生活している。
そう、今の人類と言うのは前の人類にゾンビと呼ばれていた種族だった。
そしてあの宇宙生物は旧人類を食べつくしてしまうと小さく姿を替え、おびただしい数の細菌として地球で暮らしている。
時々人類を脅かす存在に変異しながら。

おわり


最後に2択があるのはお遊びの要素を入れた軽い感じのお話と言う事なんでしょうね。
でもまあ、SFと銘打つなら宇宙生物がどういうものかはちゃんと描写してほしかったですね。
「SFは絵だね~」と誰かが言ったとか言わないとか。
それから>原因不明のウイルス と言う書き方はおかしいかな。
何らかのウイルスが原因なら原因不明ではないですからね。
「未知のウイルスに感染していた」と言う感じでしょうか。
SFもんの雫石さんの意見を聞きたいところです(笑)
by 海野久実 (2014-10-24 10:22) 

雫石鉄也

そうですね。ゾンビになってないがいけないのですか?
なにか不都合がありますか?
私が筒井さんの「アホの壁」をレビューした時の
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/05ab32a068a37bc1c369ca5c7b7d1ebe
アホをゾンビに入れ替えると判りやすいと思います。
弟はゾンビのサッカーチームのレギュラーになればいいし、私はゾンビの先輩といい感じになればいいです。
そしてゾンビの文明を築いて繁栄すればいい。
宇宙生物は細菌になったという海野さんのアイデアはおもしろいですね。
そうですね。「未知のウィルス」の方がいいですね。最初の時点では。でも事態が進行すれば、感染したらゾンビになるウィルスということが判ってるから、全く未知ではありませんね。
このウィルス、実はずっと昔、宇宙からやって来たウィルスにうつった、太古の旧旧人類のなれのはてだったりして。こんなんがずっと続くというのはどうですか?
by 雫石鉄也 (2014-10-24 13:46) 

リンさん

<さぎしなのてるりんさん>
そうです。ゾンビは一度死んでゾンビになるんですよね。
人間として死ぬか、ゾンビになるか。
究極ですね^^
by リンさん (2014-10-24 20:11) 

リンさん

<海野久実さん>
最後の二択は、お遊びもありますが、この家族を助けたいけど方法が思いつかない。誰かあの後の展開考えてくれたらいいなと。(丸投げとも言う)
海野さんのオチは面白いですね。
さすがです。こういうの待ってました(笑)

SFは絵…そうですね。
この家族は宇宙生物を見ていないので、なんとなくスルーしてしまいましたが、それじゃダメですね。反省…
トムクルーズ主演の「宇宙戦争」みたいな感じを思い浮かべて書いたのですが、それもちょっと違うかな。難しいですね。

「未知のウイルス」 直しておきます^^
by リンさん (2014-10-24 20:31) 

リンさん

<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
アホの文明、アホの宇宙(笑) 面白いですね。
みんなゾンビになったら、ゾンビの文明ができるわけですものね。
海野さんのオチもそうですよね。

この家族は、塀の中の人だけがゾンビになるのが不公平に感じているんでしょうね。
ゾンビでいいじゃん、くらいに開き直ったら楽なのかもしれませんけどね。

雫石さんのオチも面白いですね。
ある程度の文明を手にしたら、古代人に戻ってやり直す。
ほんと、永遠に続きますね^^
by リンさん (2014-10-24 20:42) 

SORI

リンさんさん こんばんは
隣り町は宇宙生物でしたか。確かに絶望的ですね。
でもゾンビの町に戻って行くのですね。
やっぱり助かる展開がいいですね。
by SORI (2014-10-26 17:46) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
私も助かる方に1票です。
どうでしょうね^^
by リンさん (2014-10-29 13:00) 

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