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博士とマリー [SF]

人間嫌いの博士は、人間そっくりのロボットを造って、一緒に暮らした。
「人間嫌いなのに、どうして人間そっくりのロボットを造ったの?」
博士の唯一の理解者である、孫のマリーが訊ねた。
「わしのロボットは人間そっくりだが、人間のようにつまらんことで泣いたり怒ったりしない。失敗もしない。金に汚くないし、くだらん世辞も言わん」
博士は「もういいか」という具合に視線を本に戻した。
こうなると、もう話しかけても返事はない。
偏屈な性格をよく知っているマリーは、邪魔をしないように部屋を出た。

庭には、博士が造ったロボットが植木の手入れをしていた。
「マリーさん、お帰りですか?」
ロボットは、にこやかに笑った。
「ご苦労さま。ええと、名前は何だったかしら?」
「マイケルです。マリーさん。以後、お見知りおきを」
「マイケルさん、おじいちゃん、偏屈で大変だろうけどよろしくね」
「お心遣いありがとうございます。私は大丈夫です」
マイケルは、恐ろしい速さで植木の手入れを終え、次の仕事に取り掛かった。

博士は天才的な科学者だが、その才能を世のために使おうとはしなかった。
「もったいないな」と、マリーはいつも思っていた。

「ただいま」
「おかえりマリー、おじいちゃんのところへ行っていたの?」
「うん。おじいちゃん、すごいよ。マイケルっていう人間そっくりのロボットを造ったの」
「まあ、お父さん、またそんなものを…」
母親は眉間に皺を寄せながらため息をついた。
「マリー、おじいちゃんがロボットを造っていること、絶対言っちゃダメよ」
「どうして?」
「おじいちゃんの技術を盗みに来る人がいるからよ」
「わかった」
マリーに父親はいない。小さい頃に亡くなった。
母親はいつも忙しく、マリーは博士の家で過ごすことが多かった。

ある日、マリーがいつものように博士の家に行くと、見たことのない靴があった。
マイケルが、廊下で静かに座っている。
「マイケルさん、お客さま?」
「はい、マリーさん、知らない人が来ています」
マリーは、そっと壁に耳をあてた。とたんに、博士の怒鳴り声が聞こえてきた。

「いい加減にしろ。ロボットなどわしゃ知らん。あれは人間だ」
「いや、わかるんですよ。私、ロボット探知機を持ってますから。博士、お願いしますよ。その技術を私どもに教えて下さい」
客の男は必死に頼んでいる。マリーはたまらず、ドアを開けて中に入った。
「おじいちゃん、教えてあげたら?マイケルさんみたいなロボットがいたら、多くの人が助かるわ」
「マリー、出て行きなさい!」
いつになく厳しく叱った博士の後ろで、客の男がマリーに探知機をあてた。
「ほう、この子もロボットですか。実によく出来ていますな」
マリーに向けられたロボット探知機は、確かに赤く反応している。
「婿さんとお孫さんを事故で亡くしたと聞きました。もしかして、お孫さんのかわりにロボットを?」
「うるさい!出て行け。マイケル、こいつをつまみ出せ」
マイケルが「はい」と男を羽交い絞めにして、有無を言わさず外に出した。

マリーは、回線がショートしてしまったように首を傾げていた。
「おじいちゃん、わたし、ロボットなの?」
どうりで、泣きもしないし怒りもしない。失敗もしないし金に汚くないし、くだらないお世辞も言わない。
マリーは、自分がロボットであるという情報をインプットして、うなだれる博士の手を取った。
「おじいちゃん、大好きよ」

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コメント 6

ぼんぼちぼちぼち

マリーちゃんロボットだったのでやすね。
そう、欠点だらけなのが人間なんでやすよね。
近しい人間に対してすぐに怒ったりしないようにせねば!と反省させられやした。
でもまたすぐアタマにくるんだよなぁ(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2015-05-13 16:47) 

SORI

リンさんさん おはようございます。
自分でもロボットと気が付かないくらいに、すごい技術なのですね。マイケルが、マリーのいいお父さんになってくれそうで安心いたしました。
by SORI (2015-05-14 05:28) 

みかん

未来の便利なロボット 
自分もロボットだったとはちょっとかなしいお話でしたね。
by みかん (2015-05-15 22:42) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
人間って、泣いたり怒ったりするからいいんですよね。
私はどちらかというと、感情を表すのが苦手です^^
by リンさん (2015-05-16 11:15) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
マリーは人間で博士の孫という設定をインプットされていたのでしょう。
>マイケルがお父さん…ああ、なるほど、ずっと一緒にいられそうですね。
by リンさん (2015-05-16 11:18) 

リンさん

<みかんさん>
ありがとうございます。
そうですね。未来には、共に暮らすロボットが普通にいるかもしれませんね。
マリーは自分がロボットと知っても悲しくはならないんですよね。
そこが余計に切ない…かも^^
by リンさん (2015-05-16 11:21) 

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